青年は、その後数回、お店に姿を見せた後、ダーリャに話しかけた。
彼が訊ねたのは、彼女の生い立ち--
聞き終えると、彼女に店を辞めるよう告げた。そして、住まいを与える代わりに読み書きを覚えるよう約束させる。
--そんなに美味い話がある・・!?
ダーリャは、ここに来てわかったことがある。
お姉さんは、この青年が言うような美味い言葉に乗せられて、愛人にされた--
その見返りが高価な衣服だったり、金銭だったり・・
けれど、男性が飽きてしまえば、物のように捨てられる--そんな同僚を何人か見た。
が、だからといって、反対を押して都会に来た自分が、簡単には帰れない--
里心がついたのも、現実に目覚めたからだった。
ダーリャは、青年を拒絶した。
が、彼は引き下がらない、自分は時々観劇につき合ってもらうことがあるかもしれないが、それ以外で彼女を尋ねる時は、勉強が進んでいるかどうかを見るだけだ、と。
最終的に、彼の言葉を信じたのは、彼が敬虔なキリスト教徒であるため、様々な制限を自身に課していること、また、ロシアの農村の現状を憂い、自分にできることを模索中であること等、彼女には未知の話ばかりだったが、語る彼の様子に真摯なものを感じたからだった--
とはいえ、不安が消えたわけではない。取り敢えず彼の云う通りにしてみて、様子を見ることにした。
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住まいは、アパートといっても、住んでいるのは上流階級に属する人ばかり。
調度品も総て用意されていて、衣装なども、彼――仮に名を
ミハイル
とする--が、用意してくれた。
いきなりお姫様になったような生活に、ダーリャは驚くばかり。
が、やはり、無償でこんなことをするだろうか、といった疑問を拭い去ることはできなかった・・

