国民思いの人徳ある王--
王の死に直面したアンケセンは、涙が止まらない。
愛する息子に向き合うことすら困難になってしまった・・
王宮の子守がそれを補おうとするが、赤子を彼女達に
渡そうとせず、面倒をみるひとりの青年がいた。
それは、アンケセンとシェションクの兄--
実は、彼ら兄妹には、もう一人兄がいた。
3人兄妹の長兄だったにもかかわらず、王になれなかった
理由は、彼が発達障害と思われる問題を抱えていたからだ。
けれど、父母も兄妹も、彼の生まれついての純粋さを愛した。
特にシェションクは、彼の身の回りの世話のほとんどを、自ら
進んで引き受けた。
--発達障害はあっても、シェションクが事故死したことは
はっきりと理解していた。
しかし、悲嘆に暮れる妹を何とか支えたい、励ましたいと
思う彼がとった行動は、嘆き悲しむことではなく、彼らの
子である王子の世話をすることだった。
--王子が生まれた時からそうだったが、彼は、とにかく、
暇さえあれば赤子を両腕に抱き、その腕をゆりかごのように
揺らしてはあやしていた。
王子を大切に抱えては、愛おしそうに顔を覗き込む・・
彼に抱かれると、赤子は泣き止み眠った。
そんな姿に、子守達も、彼から王子を取り上げることを
諦め、そして、彼の深い愛情に心を打たれるのだった--
兄の温かい助けと、側近達の協力を得て、アンケセンの
哀しみも、次第に癒されていった・・

