Kさんの前世であるこの女性--名を仮に
アンケセン
とする--
女性の頭上を、一羽の大きな鳥が、その羽根を
いっぱいに広げ、悠々と舞っている・・・
神の啓示を得たと喜ぶアンケセンの傍らには、
頭に立派な王冠を被せられた幼い男の子。
--彼女の息子、王位を継ぐ存在だった。
が、そこに父親の姿は無い--
アンケセンの夫は、すでにこの世に居なかった。
彼の忘れ形見である一人息子--息子の晴れの日
のため、精魂傾けて造り上げた神殿は、彼女に永遠の
幸福をもたらすものと信じられた・・・
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夫が迎えた突然の死は、当時18歳だったアンケセン
にとって耐え難いものとなった。
彼女が限りない尊敬と、深い愛情を注ぎ続けた夫は、
彼女と年齢がひとつしか違わない、19歳の若さで
逝った--愛する妻と愛息子の未来を案じつつ・・
十代で王となった夫は、アンケセンの『兄』でもあった。
その若さで、日々、王としての役割を立派にこなし、
国はこの先もずっと安泰に違いないと、人々に思わせた。
自身のことより、国民の生活を優先させる、歴代の王
と比較しても、特異な存在でもあった。
息子が誕生して間もなく、2人の平穏で幸せな日々が
たったの一日で崩れ去ることになろうとは、誰も思って
いなかった。
--それは、敵の侵略でも後継者争いでもない事件が
引き金となった・・

