師範のレッスンで基本を学んだ寿三郎は、次第に腕を上げていった。
他の弟子達に比べ期間は短いので、洗練された技術とまではいかない
が、大勢の剣士見習いの中では、頭ひとつ抜きん出た存在のひとりに
なっていた--
--そんなある日、有望な弟子数名が、師範に呼ばれた。
剣士見習いといっても、彼らの中で最も腕がたつと師範が見込んだ
『エリート』ばかりが集められたのだ--。
数は6名ばかり--が、彼らが思わず顔を見合わせたには理由があった--
寿三郎が混じっていたからだ・・・
顔ぶれを見れば、どのようなクオリティーの弟子が集められたかは
一目瞭然--
確かに彼は目立っていた。しかしそれは上達の速さと身の軽さ、決して
技術が抜きん出ていたわけではない。
彼は異色の存在だった。
が、当の寿三郎は、何のために呼ばれたかも知らぬのに、鼻高々、舞い
上がっている--
師範は、もの問いたげな表情の彼らをぐるりと見回すと、数日中の出立
を告げた・・・
