子ども達に交じって、無邪気に遊ぶ少女を見初めた坂上の前世である兵士ーー
(仮に名前を ジャムカ とする)
その夜、兵士の一行は、通り過ぎた村に再び戻ってきた。
戦からの帰還であるため急ぎはしないものの、長旅の途上、民間のゲルに宿泊させて
もらう。その日は、少女の住居であるゲルを宿にさせてもらおうということで戻ってきたの
だった。
実際は、ジャムカの意思が働いていたのかもしれない・・・
兵士達がゲルに泊まることを歓迎しない部族は、ほとんど無いーー表面上・・
にこやかな笑顔で戸口に現れたのは、少女の母である。
若く、そして、驚くほど美しい容貌の持ち主だったーー
兵士達の誰もが、母親に気を取られる中、ひとりジャムカだけは目も呉れず、
父の前世である少女ーー仮にツェツェクと呼ぶーーだけをじっと見つめていた。
昼間、遊びに夢中だったツェツェクは、兵士達の存在すら知らない。
しかしその夜は、夕食の最中でも自分を見つめてくる変わった兵士と、否が応でも目が
合ってしまうーー
同じ年頃の娘達に比べて幼く、男性に恋した経験も無いーー
ーー驚きと恐怖と・・・けれど、射抜くように見つめてくる若い兵士に、生まれて初めて抱く、
不思議な想いに戸惑いを隠せなかった・・・