カザフの女性の前世である、フランス軍人ーー
帰国していた間も、中国に住む彼女のことを忘れることはなかった。
そして、その強い意志は、決して男性だけのものではない。
ーー女性も、父にひどく反対されたからといって、意志を簡単に曲げるような性格ではなかった。
二人は、父を説き伏せるのは不可能と判断、駆け落ちを決意する・・
ーー身に着けていた衣服を捨て、洋装に身を包んだ彼女は、黒いマントを羽織り、夜の闇に消えた・・・
男性に寄り添い、手を固く繋ぎあって・・
*☆*:;;;:*☆*:;;;:
ーー故郷を遠く離れ、女性は汽車に乗っていた。
とある駅に到着すると、棚からトランクを下ろし、男性と供に降り立つ。
女性に不安は無く、何かワクワクするような気持ちを抱いていたーー。
辺ぴな場所ーー
すでに軍服姿ではない男性は、シルクハットを被っている。
2人の視線の先には、小さな教会が見えた・・・
ーー次に、唐突に見えてきた映像は、年老いた男性の姿ーー
荒涼とした岸壁をひとり歩いている・・
皺が寄り、白髪が風になびいていた。
男性の心にあるのは、先立たれた妻の面影ーーー
海の彼方に見ていたのは、年月を経ても決して消えることのない二人の思い出だった・・

