前世の男性にはある癖があった。
それは、村人と話をする時などに、必ず腕組みをするというものだ。
背の高い男性の、腕は長いーー
村人との会話は、男性にとって、とてもリラックスできる心地よいものだったが、そんな時に癖がでる。
ーー実はこの男性、職業は
官吏(=公務員)
だ、と最初に聴こえ(見え)ていた。
期限はわからないものの、国からその村へ派遣され、宿舎も与えられている。
重要な仕事のひとつが、中央から村への指示や情報を、全村人に通達、徹底させることだった。
ーー国からのお達しとはいえ、特に厳しいものとか、虐げるようなものは皆無で、それこそ現代の自治会で伝えられるような緩やかなものがほとんどーー
ただ、村人の識字率が高くなかったため、文書で伝えることは難しい。
速やかに、正確に情報を伝達する必要に迫られ、村を一軒一軒歩いて回ることによって、世間話を交えながら、任務を遂行していたのだ。
ーー男性は教育を受け、官吏という職業に就いた。
村人にとってみれば、街から来た位の高い人物なのだろうが、男性の目線は村人と一緒。
村人も、男性に対してかしこまるようすもなく、近所の兄ちゃんが来た、ぐらいの感じで、野良仕事の手を休め、鋤や鍬を手にしたまま話し込んでいるーーー
仕事の時はいつも三銃士のような堅苦しい制服を身に着けてはいたが、威張らない、偏見のない人物だった・・

