十二単のような衣装を身に着けた女性は、部屋の端
ーー正面の窓に向かい、部屋の中央に座る前世の男性の右斜め後ろーー
に控え、うつむいたまま座っていた。
うつむいたまま顔を上げないのは、恥ずかしい というより、夫である男性の顔を真正面から見ないという
習慣 によるもののようだ。
前世の男性の名前は ~~麻呂
・・フルで見ることができなかった。なんだか いかにも といった風の名前だ・・
三方に大きく開かれた窓から見ることができる朝焼けの空、そして静けさーー
総てが絵画のように美しい
ーーそんな景色の中、男性が懐から取り出したものは
横笛(篠笛)
この男性は、篠笛の名手でもあるようで、美しい朝焼けの中に、妙なる調べが響き渡るーー
そしてそれは、彼の新妻に聴かせるためのものだった・・

