前世の男性は、アラビアンナイトを
連想させるような王宮の広間に居た。
広間のほぼ中央には、顎と鼻の下に黒い髭を
たっぷりと蓄えたスルタンが、華やかな女性たちに
少し離れてその前に、前世の男性は
直立不動の状態で王に視線を注いでいた。
明らかに側近と思われるーーー
それも、側近中の側近である男性に
スルタンは、上機嫌で何かを命じる。
ターコイズブルーの壁が、王の間を後にする男性の
目に映るーーー
畏敬の念と、誇らしい気持ちとーー
究極の権力を掌中に、美しい女性を侍らし
最高級の品々に囲まれる王の姿を間近に見る日常・・・
強い忠誠心と同時に、その生活への憧れは押さえようもないーー
ーー前世を垣間見ただけにすぎなかったが
お嬢様だけでなく、何に対しても一流にこだわる
同僚のその理由が、勝手な解釈だが
前世に大いに関係があるのではないか
と思ってしまった・・・

