『赤』 がキーとなったS さんの前世は、恋愛映画そのもの
のようなドラマチックなストーリーだーー
最初に、サンタさんのような赤いドレスを着た少女が見えた。
SさんAさんとお茶している間に見えたので、何だろうと思っていると
1か月ほどして、そのドレスが大人用に変わった。
裾から覗くヒールの下は、氷の張った剥き出しの地面。
あちこちに薄く張った氷をパリパリと踏みしめながら歩いている。
暖かそうな帽子、服装の感じからロシアーーと判った上
明らかにセレブである。
綺麗なドレスに身を包んだセレブの女性が、足もとの悪い土の道を
歩いていることがすでに不自然なわけで、いったいどこへ向かって
いるのだろうかと訝ったーー
答えは前方に見えてきた幌馬車と、後ろにある大きなテント。
サーカスだーー!
次には、女性が観衆に混じり、上方へ向けて
盛んに拍手を送る姿が見えた。
ショーが終わると、女性は控室代わりの小さなテントに移動し
笑顔を向けていたーー
そこにいたのは、団員であるひとりのマッチョな男性。
その男性のファンであった女性とは
すでに、相思相愛の関係だ。
ただ身分違いの恋のため、男性は
恋心をストレートに表現することを躊躇っている。
自分にできることは、精一杯奮発して買い求めた
女性の好きな赤い色の指輪を、思いのたけを込めて
プレゼントすることだ。
ーーーしかし、別れは突然やってきた。
最後に見たのは、男性の号泣する姿ーーー
女性の姿はどこにもなかった・・・
この前世では、Sさんの気持より、男性の心情のほうを
強烈に感じた。
愛情を表現してはいけないという自制心が働き
笑いたい瞬間でも、堅い表情を崩さない男性ーーー
でも、女性が想う以上に、女性を強く愛していた男性の想いは
痛々しいほどに伝わってくる・・・
ロマンチックだが、悲しい恋物語ーー
感情を押し殺す男性の、そして最後に号泣する
その表情が記憶に残る・・
※ボリショイサーカスのHPにあった
サーカスの歴史を記した中の一文を引用すると
ーーモスクワと地方では、以前通り民営の円形舞台や
架設で数多くの一座が公演していた。たとえば、
APRAKSINの移動サーカスに農奴が出演していた
ことは有名で、サーカスは一般民衆に浸透していた。
と書かれていたが、これは19世紀半ば頃のことで
私が見たドレスの型と時代が一致する。
(上に載せた写真のドレスは、1860年頃描かれたもの)


