赤い絨毯を敷き詰めた廊下を、例の恋人が歩いている。
鎧に身を包み、冑を脇に抱えている。
ほっそりしているが、驚くほど背が高い。
年は二十歳前後。
恋人の姿を横から眺めている私は、彼が
彼の父の居室に向かっていることを知っている。
居室には書斎机があり、地球儀のような物体が
載っていたが、初日に見た灰色ではなく
オレンジ色だったため、もうひとつあるのだと思った。

机の前に立ち、何かを報告する恋人。
それを再び横から見ている私は
彼のあまりの 『かっこよさ』 に舞い上がっている。
それはあたかも、現代の少女が大好きなアイドルを
目の当たりにした時の様子に似ている。
憧れのアイドルと相思相愛になったとしたら・・・・
お分かりいただけるだろうかーーー
その激しい恋情は、私を圧倒したーーー!
その後
城の前庭から、馬に跨り去っていく騎士ーーー
悲しみに胸が塞がれる・・・・
ところで、父の書斎にいる恋人を見ている時
何故か恋人の名前が
の頭文字で始まることがわかった。
いくつか名前が浮かぶ
マルクス・・・ミシェル・・・
いや違うーー何だか、もっと長い名前・・・?
なんとかメロン(?)みたいな・・![]()
この日は、彼の名前をついに知ることはなかった。
が、退行を重ねるにつれ、情報はより詳細になっていくことや
例えば彼の名前が知りたいとか、お城の全景が見たい
と望めば、その答えとなる映像なり情報が見えてくる
ということがわかった。
とはいえ、だからといって必ずしも見えるというわけでもないが・・・
可能性は確実に広がりつつあった。

