ベッドに横になり、CDをかける。深呼吸を繰り返すうち
心が落ち着いてくる・・・
見えてきた景色は、お城の前の斜面。
小高い丘の上に建っているらしいお城の前面は
一面の緑だ。

≪イメージ≫
その草の上に、私は恋人らしき男の子と並んで座っている。
ハンサムで、笑顔が好くて・・・
ちょうどその頃見ていたフィギュアスケート男子の
髪型はボブっぽくてランビエールとは違うが、とにかく常に笑顔。
その彼と、楽しく会話しているのだ。
何を話しているのかはわからないが、とにかく目を瞑っていても
自然に笑みが零れてくるほど、楽しいと感じる。
そしてーーーその彼のことが好きで好きでたまらない・・・・
ところがその彼と別れ、石畳の道からゲートをくぐって城に入ると
寒くて冷たくてーーー楽しくてたまらなかった気持が
急激な悲しみへと変化し、涙が溢れてくる。
ーーーそれはやがて号泣へと変わっていったーーー
わずか15分ばかりのCDがほとんど終わろうとしていたにも拘らず
構うことなく、枕に顔を埋めて泣き続けた・・・
やがて涙は止まっても、その彼に逢いたい、逢いたくてたまらない
感情が湧き起こる・・・!
前世の私に、悲恋のようなものがあったのだろうか・・・・?
その前世の恋人との別れの理由は、時代が時代なので
身分の違いから引き裂かれたーー?
悲劇のヒロインのようなストーリーを想像しつつ
あまりに、少女向け恋愛小説そのものなので
「それはあんたの願望だーー!」
と主人が言うのもわからないではない。
ただ、ビロードのスカートの暖かさや
地球儀のような物体を見た時の嫌悪感
そして今回の悲しみなど
これらすべてが、とてもリアルな感情であったり
感触であったりするのは、出所不明の映像を見ること以上に
説明のつかないことだ。
『恋人』の出現によって、新たに加わった謎に
一層好奇心を掻き立てられた私は
後戻りできない迷宮の奥へと、さらに歩を進めていくことになったのだ。

