市場はブラックマンデーの約10年後、再び破壊的なボラティリティに見舞われます。
マンデルブロのいう「ワイルド・マーケット」に
1998年夏、直面したLTCMの天才クウォンツたちは数週間のうちに何十億ドルもの損を出し、
世界経済を不安定にさせ、
FRBが大規模な緊急救済措置を行うまでになりました。
彼らはモデルやリスク管理手法に基づいて、
莫大なレバレッジをかけて資産運用を行っており、
思うような方向とはとんでもなく違う方向にマーケットが動き出した瞬間、
大量の資金を蒸発させてしまったわけです。
通常通りのボラティリティで価格が変動するのであれば
モデルの言うとおりに取引することで
リスク管理も定量的にできるということになるのですが、
モデルでは説明できない場面に遭遇してしまったということです。
LTCMはしばらくの間は大変好調で素晴らしい取引結果を残しましたが、
LTCMと似たポジションのアンワインドが始まると次第に変調をきたすようになり、
ロシア政府の債務不履行を原因とする「流動性への避難」が決定的なとどめとなって
崩壊してしまいました。
デリバティブ取引で問題になるのは
流動性が欠如しているという点です。
流動性が不要のときには有り余る程の流動性があるのに、
いざ必要なときにはまったく流動性がない、
つまりは取引自体が成立しなくなるという危険性があるわけです。
LTCMが取引していた債権のクレジット市場もまさにこの問題に直面しました。
1987年10月19日
ブラック・マンデー。
世界経済は謎めいた金融商品をきっかけに危機を迎えます。
指数先物と株がともに突如として大暴落を始めたのです。
世界中が電子取引によってつながっていたため、市場崩壊は世界中に広がり、
マーケットは崩壊寸前まで追い込まれました。
混乱はFRBの資金投下により収まりましたが、
それでも市場は大きなダメージを受けました。
全米が反ウォールストリート的になり、
ファーマの効率的市場理論も疑問視されるようになり、
ポートフォリオ・インシュアランスは非常に厳しい非難を浴びることになりました。
基本的に金融工学は正確な大量のデータを膨大な計算を通して分析しますが、
その前提には相場の価格変動の分布は正規分布に近似できる
という考えがあります。
その土台の上でかの有名なブラック=ショールズの公式やポートフォリオ理論など、
高度な数学や物理学などを用いた数多くのモデルが開発されてきました。
しかしその前提こそが誤っているのではないか、という指摘を
リーマンショック以前から言ってきた人も中にはいます。
ベノワ・マンデルブロはその中のひとりで
彼は価格変動は正規分布では異常とされる値がもっとたくさん検出され
平均値周辺により多くのデータが集まるのではないかと考えました。
これは後にファットテールと呼ばれる理論になっていきます。
今彼の本を読んでいるので詳しいことはまた改めて書きます
ナシーブ・タレブも似たようなことを述べています。
市場がランダム・ウォークのような動きをすると信じている投資家は
ランダムに騙されているのであって
モデルでは起こりえないような出来事が突発的に起きるのが市場であると唱えました。
このことを彼は「ブラックスワン」と呼びました。
ブラックスワンは読みたい本のひとつです
ブラック・マンデー。
世界経済は謎めいた金融商品をきっかけに危機を迎えます。
指数先物と株がともに突如として大暴落を始めたのです。
世界中が電子取引によってつながっていたため、市場崩壊は世界中に広がり、
マーケットは崩壊寸前まで追い込まれました。
混乱はFRBの資金投下により収まりましたが、
それでも市場は大きなダメージを受けました。
全米が反ウォールストリート的になり、
ファーマの効率的市場理論も疑問視されるようになり、
ポートフォリオ・インシュアランスは非常に厳しい非難を浴びることになりました。
基本的に金融工学は正確な大量のデータを膨大な計算を通して分析しますが、
その前提には相場の価格変動の分布は正規分布に近似できる
という考えがあります。
その土台の上でかの有名なブラック=ショールズの公式やポートフォリオ理論など、
高度な数学や物理学などを用いた数多くのモデルが開発されてきました。
しかしその前提こそが誤っているのではないか、という指摘を
リーマンショック以前から言ってきた人も中にはいます。
ベノワ・マンデルブロはその中のひとりで
彼は価格変動は正規分布では異常とされる値がもっとたくさん検出され
平均値周辺により多くのデータが集まるのではないかと考えました。
これは後にファットテールと呼ばれる理論になっていきます。
今彼の本を読んでいるので詳しいことはまた改めて書きます
ナシーブ・タレブも似たようなことを述べています。
市場がランダム・ウォークのような動きをすると信じている投資家は
ランダムに騙されているのであって
モデルでは起こりえないような出来事が突発的に起きるのが市場であると唱えました。
このことを彼は「ブラックスワン」と呼びました。
ブラックスワンは読みたい本のひとつです
市場がランダムなものとして予測できるという考え方は、
1950年代半ば頃から徐々に定着しつつありましたが、
その根源は百年以上前にさかのぼります。
1827年植物学者ロバート・ブラウンは顕微鏡で観察した花粉の動きが一定ではなく
ランダムであることを発見し、その動きは
ブラウン運動と名付けられました。
フランスのルイ・バシュリエは1900年、債権の価格の値動きが
このブラウン運動と似ていると考え、研究を行いました。
彼の研究は長い間忘れ去られていましたが、
1950年代になってから評価を受けるようになり、
この発見はランダム・ウォーク理論と呼ばれるようになりました。
債権(わかりにくければ、例えばドル円)の価格はランダムに決まり、
50%の確率で上がり、50%の確率で下がる。
そしてその動きは確率的に予測ができる、というわけです。
理論上は正規分布曲線に分布が従うため。
値動きが予測できるというよりは、ボラティリティの大きさが予測できるという方が正しい。
クウォンツたちに大きな影響を与えた革新的な発見、ブラック=ショールズ・モデルもまた、
株価が常に連続してランダム・ウォークを行っていることを前提にしています。
これらの理論は定義上、価格が急に大きく変動することはないとしていました。
金融界と物理学が大きく違うのはまさにこの点にありました。
流動性のない市場では特にそうですが、
我々投資家が忘れてはならないのは、金融を動かしているのは神ではなく、
我々人間であるということです。
数学的なモデルは確かに価格のボラティリティについても、売買タイミングについても
かなりよい確率で言い当てることができました。
しかし彼らの理論は、人間は感情の生き物であるということを完全に無視していました。
人間の群衆心理はときに、理論上はありえないような価格の変動を作り出すものです。
そして実際幾度なく、その悪夢のような現実は実際に起こってきたのです。
クウォンツたちに人気だった取引手法には
スタット・アーブ(統計的裁定取引手法)と呼ばれるものもありました。
何千種もの株の相関関係をコンピュータで計算し、
長期的な相関関係が崩れる瞬間が探索できれば
その関係が修復する方向に投資するという手法です。
これは裁量トレーダーの中で今でもやっている人がいるかもしれません。
たとえばドル円と日経平均の相関係数は高いと言われています。
ドル円が上がると日経平均も上がる傾向にあるということです。
ドル円が上がっていて、日経平均が下がっているのであれば、
その差の分が元に戻って、どちらも同じ動きをするようになるはずだと考え
ドル円をショートし、日経平均をロングにしておくわけです。
どちらかが変動しなくても、もう一方が理論上は狙った方に動いてくれるので利益が出ますし、
両方とも狙った方向に動いてくれれば当然二重に利益が出せます。
すいません。あまりいい喩えが思い浮かびませんでした
こういった手法は非常に人気で-人気すぎたわけですが-
多くのクウォンツが好んで多様することになりました。
ブラックショールズモデルを応用することで
株のポートフォリオそのものに対する保険のような金融商品
ポートフォリオ・インシュアランスも開発され、多様されるようになりました。
この手法は非常に儲けが大きく、美しく、そしてシンプルでした。
株価が下がれば、先物をもっとショートすればいい、それだけです。
1950年代半ば頃から徐々に定着しつつありましたが、
その根源は百年以上前にさかのぼります。
1827年植物学者ロバート・ブラウンは顕微鏡で観察した花粉の動きが一定ではなく
ランダムであることを発見し、その動きは
ブラウン運動と名付けられました。
フランスのルイ・バシュリエは1900年、債権の価格の値動きが
このブラウン運動と似ていると考え、研究を行いました。
彼の研究は長い間忘れ去られていましたが、
1950年代になってから評価を受けるようになり、
この発見はランダム・ウォーク理論と呼ばれるようになりました。
債権(わかりにくければ、例えばドル円)の価格はランダムに決まり、
50%の確率で上がり、50%の確率で下がる。
そしてその動きは確率的に予測ができる、というわけです。
理論上は正規分布曲線に分布が従うため。
値動きが予測できるというよりは、ボラティリティの大きさが予測できるという方が正しい。
クウォンツたちに大きな影響を与えた革新的な発見、ブラック=ショールズ・モデルもまた、
株価が常に連続してランダム・ウォークを行っていることを前提にしています。
これらの理論は定義上、価格が急に大きく変動することはないとしていました。
金融界と物理学が大きく違うのはまさにこの点にありました。
流動性のない市場では特にそうですが、
我々投資家が忘れてはならないのは、金融を動かしているのは神ではなく、
我々人間であるということです。
数学的なモデルは確かに価格のボラティリティについても、売買タイミングについても
かなりよい確率で言い当てることができました。
しかし彼らの理論は、人間は感情の生き物であるということを完全に無視していました。
人間の群衆心理はときに、理論上はありえないような価格の変動を作り出すものです。
そして実際幾度なく、その悪夢のような現実は実際に起こってきたのです。
クウォンツたちに人気だった取引手法には
スタット・アーブ(統計的裁定取引手法)と呼ばれるものもありました。
何千種もの株の相関関係をコンピュータで計算し、
長期的な相関関係が崩れる瞬間が探索できれば
その関係が修復する方向に投資するという手法です。
これは裁量トレーダーの中で今でもやっている人がいるかもしれません。
たとえばドル円と日経平均の相関係数は高いと言われています。
ドル円が上がると日経平均も上がる傾向にあるということです。
ドル円が上がっていて、日経平均が下がっているのであれば、
その差の分が元に戻って、どちらも同じ動きをするようになるはずだと考え
ドル円をショートし、日経平均をロングにしておくわけです。
どちらかが変動しなくても、もう一方が理論上は狙った方に動いてくれるので利益が出ますし、
両方とも狙った方向に動いてくれれば当然二重に利益が出せます。
すいません。あまりいい喩えが思い浮かびませんでした
こういった手法は非常に人気で-人気すぎたわけですが-
多くのクウォンツが好んで多様することになりました。
ブラックショールズモデルを応用することで
株のポートフォリオそのものに対する保険のような金融商品
ポートフォリオ・インシュアランスも開発され、多様されるようになりました。
この手法は非常に儲けが大きく、美しく、そしてシンプルでした。
株価が下がれば、先物をもっとショートすればいい、それだけです。
今回はマンデルブロ『禁断の市場』後半です。
前回は経済学や金融工学についての概観にとどまりましたが、
今回はマンデルブロの提唱するフラクタル理論について書こうと思います。
前回も少し触れたとは思いますが、
従来のようなすべてのデータが連続しているとするユークリッド幾何学では
実際の市場を近似させることはできません。
なぜならば週足を日足にしても4時間足にしても5分足にしてもデータはギザギザしていて
なめらかな線形となることはないからです。
どこまで小さな足にしても線形にはならず、
同じようなギザギザしたグラフが現れるだけです。
ということは価格変動を微分積分したって何の意味もありません。
むしろ微分は不可能です。
スケールに関係なく、同じような性質が成り立っていると考えるのであれば、
もはや学校で習ってきたユークリッド幾何学は使い物になりません。
これは非ユークリッド幾何学の考え方なのです。
マンデルブロの提唱しているフラクタルも非ユークリッド幾何学に分類されます。
フラクタルのつくり方
1 まっすぐな線を折れ線に置き換える
2 この作業を繰り返していく
とっても簡単です。
もっと一般化すると、
まず三角形、直線、円といった基本図形(=イニシエーター)を設定します。
次にフラクタルを作る雛形になる単純な幾何学パターン(=ジェネレーター)を作ります。
あとはひたすらイニシエーターに代入を続けていくだけです。
イメージがわかないという方もいらっしゃると思いますので、
どんなものか目で見ていただこうと思います。



こんな図形もかけちゃうみたいです。




自己相似性
フラクタルではどの方向に拡大縮小したとしても元と同じ形が現れます。
自己アフィン
価格変動の場合、縦軸と横軸の拡大率をかえないと
一般には拡大縮小で同じ形が見えてきません。
このような相似性を自己アフィンと呼びます。
次元
0次元 点
1次元 線
2次元 面積
3次元 立体
毛糸玉について考えてみましょう。
遠くからみたらただの点(0次元)ですが、手に取ればボールのように感じます(3次元)。
近くでよく見ると糸がぐるぐる巻きになっていますね(1次元)。
どれもが正解であることはいうまでもありません。
次元は物体に固有のものではなく、測定の方法に依存する量といえます。
では次元は整数値でしかありえないのでしょうか?
答えはNOです。
瀬戸内海の島々の入り組んだ海岸線の長さの次元はいくつでしょうか。
測り方や道具によってこの長さは全く違うものになることが分かっています。
そこで導入するのがフラクタル次元です。
イギリスの海岸線のフラクタル次元は1.25、
これは入り組んだ海岸線はただの直線よりも複雑ではあるが、
2次元である面を埋め尽くすほど複雑ではない、ということを意味します。
海岸線だけでなく、川の長さや肺胞の表面積にも
このフラクタル次元を用いることができます。
フラクタル次元は形の凹凸さや不規則さを定量化する量といえるでしょう。
昨日の変動は今日の変動に影響を及ぼさないという仮定を用いる金融工学は多いですが、
総生産、インフレ率、失業率などの経済指標に関しては
ある程度の相関があることを前提にしています。
どれくらい大きな相関があるのか、どれくらいの期間同じ傾向が持続するのか
といったことが大事です。
つまり相関は期間が長くなればなるほど次第に減衰していくとはいえ、
どんなに長い期間でも完全にゼロにはならない、と考えることができるということです。
ここからマンデルブロは価格の従属性に関するベキ指数 Hを考え出しました。
Hは0から1までの連続的な値をとります。
H=0.9 価格は激しく変動
変動の方向は持続する傾向にあり
H=0.5 価格の広がりは時間のべき乗則に従う
過去の変動は未来に全く影響を及ぼさない
H=0.1 価格変動は小さい
ジグザグといったりきたりの変動を繰り返す
ボラティリティを特徴づけるパラメータ α
対数グラフにプロットした直線の傾きがベキの指数を表します。
この傾き(α)が穏やかであればあるほど、
分布の広がりが大きいことを意味します。
αの値が低い時には市場はリスクが高く、
突然の大きな変動を起こす可能性が高くなります。
逆にαの値が高い時には市場はランダムウォークに近くなります。
これらふたつのパラメータによって特徴づけられる効果を分離するために
R/S解析(ノンパラメトリックとよばれる統計テストのひとつ)を使って
モデルを仮定することなく特徴を抽出することができるそうです。
マルチフラクタル時間
トレーダーの活動に基づいて速くなったり、遅くなったりする時間の流れ。
物理的な時間とは異なるもの。
『禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン』
ベノワ・B・マンデルブロ
リチャード・L・ハドソン
監訳 高安秀樹
訳 雨宮絵理
高安美佐子
冨永義治
山崎和子
東洋経済新報社 2008年6月
前回は経済学や金融工学についての概観にとどまりましたが、
今回はマンデルブロの提唱するフラクタル理論について書こうと思います。
前回も少し触れたとは思いますが、
従来のようなすべてのデータが連続しているとするユークリッド幾何学では
実際の市場を近似させることはできません。
なぜならば週足を日足にしても4時間足にしても5分足にしてもデータはギザギザしていて
なめらかな線形となることはないからです。
どこまで小さな足にしても線形にはならず、
同じようなギザギザしたグラフが現れるだけです。
ということは価格変動を微分積分したって何の意味もありません。
むしろ微分は不可能です。
スケールに関係なく、同じような性質が成り立っていると考えるのであれば、
もはや学校で習ってきたユークリッド幾何学は使い物になりません。
これは非ユークリッド幾何学の考え方なのです。
マンデルブロの提唱しているフラクタルも非ユークリッド幾何学に分類されます。
フラクタルのつくり方
1 まっすぐな線を折れ線に置き換える
2 この作業を繰り返していく
とっても簡単です。
もっと一般化すると、
まず三角形、直線、円といった基本図形(=イニシエーター)を設定します。
次にフラクタルを作る雛形になる単純な幾何学パターン(=ジェネレーター)を作ります。
あとはひたすらイニシエーターに代入を続けていくだけです。
イメージがわかないという方もいらっしゃると思いますので、
どんなものか目で見ていただこうと思います。



こんな図形もかけちゃうみたいです。




自己相似性
フラクタルではどの方向に拡大縮小したとしても元と同じ形が現れます。
自己アフィン
価格変動の場合、縦軸と横軸の拡大率をかえないと
一般には拡大縮小で同じ形が見えてきません。
このような相似性を自己アフィンと呼びます。
次元
0次元 点
1次元 線
2次元 面積
3次元 立体
毛糸玉について考えてみましょう。
遠くからみたらただの点(0次元)ですが、手に取ればボールのように感じます(3次元)。
近くでよく見ると糸がぐるぐる巻きになっていますね(1次元)。
どれもが正解であることはいうまでもありません。
次元は物体に固有のものではなく、測定の方法に依存する量といえます。
では次元は整数値でしかありえないのでしょうか?
答えはNOです。
瀬戸内海の島々の入り組んだ海岸線の長さの次元はいくつでしょうか。
測り方や道具によってこの長さは全く違うものになることが分かっています。
そこで導入するのがフラクタル次元です。
イギリスの海岸線のフラクタル次元は1.25、
これは入り組んだ海岸線はただの直線よりも複雑ではあるが、
2次元である面を埋め尽くすほど複雑ではない、ということを意味します。
海岸線だけでなく、川の長さや肺胞の表面積にも
このフラクタル次元を用いることができます。
フラクタル次元は形の凹凸さや不規則さを定量化する量といえるでしょう。
昨日の変動は今日の変動に影響を及ぼさないという仮定を用いる金融工学は多いですが、
総生産、インフレ率、失業率などの経済指標に関しては
ある程度の相関があることを前提にしています。
どれくらい大きな相関があるのか、どれくらいの期間同じ傾向が持続するのか
といったことが大事です。
つまり相関は期間が長くなればなるほど次第に減衰していくとはいえ、
どんなに長い期間でも完全にゼロにはならない、と考えることができるということです。
ここからマンデルブロは価格の従属性に関するベキ指数 Hを考え出しました。
Hは0から1までの連続的な値をとります。
H=0.9 価格は激しく変動
変動の方向は持続する傾向にあり
H=0.5 価格の広がりは時間のべき乗則に従う
過去の変動は未来に全く影響を及ぼさない
H=0.1 価格変動は小さい
ジグザグといったりきたりの変動を繰り返す
ボラティリティを特徴づけるパラメータ α
対数グラフにプロットした直線の傾きがベキの指数を表します。
この傾き(α)が穏やかであればあるほど、
分布の広がりが大きいことを意味します。
αの値が低い時には市場はリスクが高く、
突然の大きな変動を起こす可能性が高くなります。
逆にαの値が高い時には市場はランダムウォークに近くなります。
これらふたつのパラメータによって特徴づけられる効果を分離するために
R/S解析(ノンパラメトリックとよばれる統計テストのひとつ)を使って
モデルを仮定することなく特徴を抽出することができるそうです。
マルチフラクタル時間
トレーダーの活動に基づいて速くなったり、遅くなったりする時間の流れ。
物理的な時間とは異なるもの。
『禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン』
ベノワ・B・マンデルブロ
リチャード・L・ハドソン
監訳 高安秀樹
訳 雨宮絵理
高安美佐子
冨永義治
山崎和子
東洋経済新報社 2008年6月
今回はベノワ・B・マンデルブロの『禁断の市場』をせっかく読んだので、
その前編として金融工学やその基礎となっている経済学について
おおまかな概観ができればいいかなと思います。
何が問題で、どこから改善が必要なのかもわかっていただけるかと。
後編ではユークリッドの世界から非ユークリッドの世界にご案内するつもりです。
経済学は複雑な現象を簡潔にわかりやすくモデル化しようとするために、
しばしば重要な前提を無視してしまいます。
経済学の根拠のない仮定
人間は合理的であり、豊かになることだけを目的にしている
行動経済学という分野において
感情が人の判断を歪めることが分かっています。
投資家はすべて似たりよったりである
短期投資、デイトレーダーなどスパンも違います。
システムトレード、裁量トレード、テクニカル派、ファンダメンタルズ派…etc
価格が急変することはない
変動幅の大小はあるが、大きな急変はよくあります。
FXのレートを眺めていればわかると思いますが、価格は連続ではなく、
数pips飛んでいることが多々ありますね。
価格の変動はブラウン運動である
観測できる実際のデータとの整合性があまりに欠けています。
すでにいろいろとおかしい仮定が前提になっていることは
お分かりいただけたかと思いますが、
実は経済学や金融工学の前提としている仮定には
もっと致命的に現実味を欠くものがあります。
ほとんどの金融工学のベースは正規分布です。
しかしベキ分布の方がむしろ正しい近似を得られる、とマンデルブロはいいます。
市場は正規分布では近似できません。
ベキ分布のわかりやすい例は正方形の面積と一辺の辺の長さでしょうか。
辺が2倍になれば、面積は4倍になる。
こういう関係性はベキ分布と呼ばれる分布になります。
なおエクセルでベキ分布のグラフをかきたいときは
対数グラフで描くとよいでしょう。
タテヨコの両座標軸を対数目盛で表示させると
対数グラフを簡単に描くことができます。
※要望があれば、描き方について別途記事を書きます。
金融市場は我々が思っている以上に脆弱です。
安全な市場などという幻想は存在しません。
市場価格には予期しない大変動がつきものです。
正規分布よりも裾野が広く、平均値付近にほとんどのデータが集まる一方で、
平均値からかけ離れた値も多く散見されるのです。
いわゆるファットテールです。
経済学が前提とする正規分布よりも裾野が厚く、広がりがあるため、
リスクが非常に高いといえます。
もっとも正規分布を使えば、マーコヴィッツのポートフォリオ理論も使えるし、
ブラックショールズの方程式も使えるので大変便利ではありますが…
最近では地震の強さを示す指標、マグニチュード(ベキ分布に従う)の考え方を
金融に応用しようという動きもあるそうです(マーケット・ショック指数)。
したがって50%50%で価格が上下するようなランダムウォークの考え方では、
市場価格のボラティリティの大きさやその変動を
的確に捉えることは不可能です。
実際に「それっぽい」だけのチャートを人工的に作ることは簡単にできますが、
ボラティリティの変動を見れば偽物であることは明らかですし、
そのようなモデルでは利益が得られにくくなりつつあります。
実際に2008年のリーマンショックで
ランダムウォークを基礎とした金融工学は致命的なダメージを受けました。
またトラブルは続いて起こるので、
トレンドが形成されるとその動きが継続しやすくなります。
つまりトレンドができるとランダムウォークではうまく説明ができなくなります。
金融工学におけるランダムウォーク理論では
各々の価格変動は独立したものであると考えるわけですが、
それではあまりに現実からかけ離れた理論と言わざるを得ないでしょう。
さらにマンデルブロは金融市場において時間の進み方は一定ではない、といいます。
取引量や価格変動の速さに合わせて時間の進み方が異なる、と。
これについてはいまいち僕の理解が浅いので、また改めて
ということにしたいと思います。
最後に金融工学を本当にザッとだけ
概観して今回の記事はおしまいにします。
金融工学の歴史
発祥
・バシュリエ 価格の変動する確率を予測することをはじめて試みた人物
独立でランダムな変数の和によって価格の変動は表せると考えました
→ファーマの効率的市場仮説につながります
中心的な理論
・マーコヴィッツ ポートフォリオ理論
問題点
正規分布を用いてリスクを算出(正規分布では説明できないことがあまりに多い)
正確なデータと膨大な計算量が必要
・シャープ ポートフォリオ理論を単純化→資本資産価格モデル(CAPM)
・ブラック=ショールズ オプション価格の推定
『禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン』
ベノワ・B・マンデルブロ
リチャード・L・ハドソン
監訳 高安秀樹
訳 雨宮絵理
高安美佐子
冨永義治
山崎和子
東洋経済新報社 2008年6月
その前編として金融工学やその基礎となっている経済学について
おおまかな概観ができればいいかなと思います。
何が問題で、どこから改善が必要なのかもわかっていただけるかと。
後編ではユークリッドの世界から非ユークリッドの世界にご案内するつもりです。
経済学は複雑な現象を簡潔にわかりやすくモデル化しようとするために、
しばしば重要な前提を無視してしまいます。
経済学の根拠のない仮定
人間は合理的であり、豊かになることだけを目的にしている
行動経済学という分野において
感情が人の判断を歪めることが分かっています。
投資家はすべて似たりよったりである
短期投資、デイトレーダーなどスパンも違います。
システムトレード、裁量トレード、テクニカル派、ファンダメンタルズ派…etc
価格が急変することはない
変動幅の大小はあるが、大きな急変はよくあります。
FXのレートを眺めていればわかると思いますが、価格は連続ではなく、
数pips飛んでいることが多々ありますね。
価格の変動はブラウン運動である
観測できる実際のデータとの整合性があまりに欠けています。
すでにいろいろとおかしい仮定が前提になっていることは
お分かりいただけたかと思いますが、
実は経済学や金融工学の前提としている仮定には
もっと致命的に現実味を欠くものがあります。
ほとんどの金融工学のベースは正規分布です。
しかしベキ分布の方がむしろ正しい近似を得られる、とマンデルブロはいいます。
市場は正規分布では近似できません。
ベキ分布のわかりやすい例は正方形の面積と一辺の辺の長さでしょうか。
辺が2倍になれば、面積は4倍になる。
こういう関係性はベキ分布と呼ばれる分布になります。
なおエクセルでベキ分布のグラフをかきたいときは
対数グラフで描くとよいでしょう。
タテヨコの両座標軸を対数目盛で表示させると
対数グラフを簡単に描くことができます。
※要望があれば、描き方について別途記事を書きます。
金融市場は我々が思っている以上に脆弱です。
安全な市場などという幻想は存在しません。
市場価格には予期しない大変動がつきものです。
正規分布よりも裾野が広く、平均値付近にほとんどのデータが集まる一方で、
平均値からかけ離れた値も多く散見されるのです。
いわゆるファットテールです。
経済学が前提とする正規分布よりも裾野が厚く、広がりがあるため、
リスクが非常に高いといえます。
もっとも正規分布を使えば、マーコヴィッツのポートフォリオ理論も使えるし、
ブラックショールズの方程式も使えるので大変便利ではありますが…
最近では地震の強さを示す指標、マグニチュード(ベキ分布に従う)の考え方を
金融に応用しようという動きもあるそうです(マーケット・ショック指数)。
したがって50%50%で価格が上下するようなランダムウォークの考え方では、
市場価格のボラティリティの大きさやその変動を
的確に捉えることは不可能です。
実際に「それっぽい」だけのチャートを人工的に作ることは簡単にできますが、
ボラティリティの変動を見れば偽物であることは明らかですし、
そのようなモデルでは利益が得られにくくなりつつあります。
実際に2008年のリーマンショックで
ランダムウォークを基礎とした金融工学は致命的なダメージを受けました。
またトラブルは続いて起こるので、
トレンドが形成されるとその動きが継続しやすくなります。
つまりトレンドができるとランダムウォークではうまく説明ができなくなります。
金融工学におけるランダムウォーク理論では
各々の価格変動は独立したものであると考えるわけですが、
それではあまりに現実からかけ離れた理論と言わざるを得ないでしょう。
さらにマンデルブロは金融市場において時間の進み方は一定ではない、といいます。
取引量や価格変動の速さに合わせて時間の進み方が異なる、と。
これについてはいまいち僕の理解が浅いので、また改めて
ということにしたいと思います。
最後に金融工学を本当にザッとだけ
概観して今回の記事はおしまいにします。
金融工学の歴史
発祥
・バシュリエ 価格の変動する確率を予測することをはじめて試みた人物
独立でランダムな変数の和によって価格の変動は表せると考えました
→ファーマの効率的市場仮説につながります
中心的な理論
・マーコヴィッツ ポートフォリオ理論
問題点
正規分布を用いてリスクを算出(正規分布では説明できないことがあまりに多い)
正確なデータと膨大な計算量が必要
・シャープ ポートフォリオ理論を単純化→資本資産価格モデル(CAPM)
・ブラック=ショールズ オプション価格の推定
『禁断の市場 フラクタルでみるリスクとリターン』
ベノワ・B・マンデルブロ
リチャード・L・ハドソン
監訳 高安秀樹
訳 雨宮絵理
高安美佐子
冨永義治
山崎和子
東洋経済新報社 2008年6月