高度一万メートルを飛行中のエアライン104便。突如として、ファーストクラスに険しい怒号が響き渡った。
「動くな! この飛行機は乗っ取った! 操縦席のドアを開けろ、さもなければ乗客の命はないぞ!」
果物ナイフ(機内食のステーキ用)を振り回して現れたのは、顔を隠す目出し帽を前後逆に被ってしまい、自分の目が隠れて前が全く見えていない男——まぬけなハイジャック犯だった。
たまたまエコノミークラスからカレーの匂いに釣られて迷い込んできていた小柄な男、スモール探偵がシートから跳び起きた。
「ふははは! 乗客の皆さん、ご安心を! この大空の密室ハイジャック事件、私スモールがジェット気流よりも速く解決して差し上げましょう!」
1.スモール探偵の踏みとどまり、からの大やらかし
スモール探偵は、ハイジャック犯が足元にポロッと落とした「手荷物の航空券」を発見した。彼は手を伸ばしかけて……ピタリと動きを止めた。
「……いや、待てよ? 前回の事件で、私はピッチングマシンを暴走させてスタジアムの電光掲示板を木っ端微塵にしてしまった。同じ轍は踏まない! 今の私は、高度一万メートルの気圧と安全性を最優先に考える、エアライン・タクティカル探偵へと進化したのだ!」
スモール探偵の立派な(?)成長に、ファーストクラスの乗客たちが「おおっ」と機内モードの拍手を送る。
「皆さん、犯人は前が見えていないフリをして、実は『音』で我々の位置を把握している盲目のスナイパーに違いない! ならば、機内の気圧を一時的に変化させ、犯人の三半規管を狂わせて無力化して見せましょう!」
スモール探偵はドヤ顔で、壁にあった「非常用・客室空気循環システム」の制御パネルを開き、一番大きくて目立つ**「緊急・機外排気バルブ」**のレバーを力任せに引き絞った。
「これでお前の平衡感覚は終わりだ! 犯人よ、テイクオフの時間だ!!」
プシューーーーーーーーッ!!!!!
バルブが開いた瞬間、凄まじい勢いで機内の空気が外へと吸い出され、客室乗務員が用意していた**「今夜のディナー用のアツアツのチキンカレー100人前」**が、寸胴鍋ごと突風に煽られて通路を猛スピードで逆流!
ファーストクラスは一瞬にして「スパイスの地獄」と化し、スモール探偵は激辛カレーの波を頭からまともに浴び、「目が、目がぁぁぁっ!?」と叫びながらカレーの海に溺れ、そのまま床に転がって気絶してしまった。
2.覆る真実
「あーあ、また機内が大惨事だ……」
頭からチキンと福神漬けをぶら下げて気絶しているスモール探偵を横目に、チーフパーサーがため息をついた。
「あの排気バルブを開けたせいで、ファーストクラスの高級シートが全部カレーまみれだ……。それにあのハイジャック犯、スナイパーでも何でもなく、ただの『まぬけな一般人』ですよ。旅行のテンションが上がりすぎて機内でお酒を飲みすぎちゃって、泥酔して自分がやってる大人気ゲーム『グランド・セフト・オト』の強盗ミッションのセリフを本気で叫んじゃっただけです。本人は今、カレーの匂いと強烈なスパイスの刺激で完全に目が覚めて、自分が何をしたか気づいてガタガタ震えながらトイレの個室に引きこもって泣いてますよ」
つまり、事件性は全くなく、ただの酔っ払いの大迷惑な寝言(ご乱心)だったのだ。しかし、スモール探偵がバルブを暴走させたせいで、機内は完全な「カレー風味のパニック現場」と化してしまった。
3.ビック探偵のあらゆるトリックを使った解決
「仕方ない。僕がフライトを正常に戻そう」
カレーのスパイスの香りが充満するファーストクラス。長身のビック探偵は、優雅に機内サービスのハーブティーを飲みながら、集められた乗客たちの前に静かに立った。
「スモール君が機内をインドのカレーフェスティバルへと変貌(アシスト)させるという大失態をおかけしたようだ。しかし、このカレーパニックのドサクサに紛れて、ある人間が本物の『犯罪トリック』を実行している。だから、少しばかり私の手品(ハッタリ)に付き合ってもらおう」
ビック探偵は、乗客の中に紛れていた、やたらと大きな「機内持ち込みリュック」を抱えた成金の男の前に歩み寄った。
「成金さん。あなたはハイジャック騒ぎとカレーの突風が起きたドサクサに紛れて、前の席の貿易商の方が足元に置いていた『時価5000万円の高級エメラルドの原石』を自分のリュックに隠しましたね」
「な、何を馬鹿な! 私はハイジャック犯が怖くて、自分の荷物を守っていただけだ! 証拠でもあるのか!」
「なるほど」ビック探偵は懐から、ピカピカと明滅する「謎の円盤型リモコン」を取り出した。
「これは、警察の科学研究所が開発した『スパイス・分子残留レーダー』です。先ほどスモール君が機内にぶちまけたカレーの成分には、非常に強い『ウコン(ターメリック)』の粒子が含まれている。このレーダーを使えば、先ほどカレーの突風を浴びながら、同時に『他人の宝石ケース』に触れた人間の指先を、特殊な電磁波で『強制的に黄色く発光』させることができます。……さあ、起動しましょう。3、2、1」
ビック探偵がボタンを押すフリをして、手元でカチリと音を鳴らした。
すると、成金男は「ひぃっ!?」と悲鳴を上げ、思わず自分の**「両手」**を胸の前でガッチリと握りしめて、爪を隠すように震わせた。
「おやおや、素晴らしい反応だ。成金さん、その両手……あなたが今、発光を恐れて必死に隠したその手で、前の席からエメラルドを盗み取ったのではありませんか?」
「くっ……! な、なぜ本当に指先が熱くなった気がしたんだ……!」
成金男はガタガタと震えながら、自らリュックを開け、中から眩い緑色のエメラルドのケースを床にドサッと落としてしまった。
「……私がやりました。ハイジャックが起きて機内が大混乱になったのを見て、これならどさくさに紛れて盗んでも、全部『まぬけなハイジャック犯の仕業』に押し付けられると思ったんです……!」
成金男が床に泣き崩れたのを見届け、ビック探偵はリモコン(ただの機内用読書ライトのリモコン)をポケットにしまった。
「な、なぜ本当に指先が熱くなったんだ……? 航空科学の捜査なのか!?」
連行される間際、成金男が悔しそうな顔で尋ねる。
「そんなわけないでしょう」ビック探偵はニヤリと笑った。
「あなたがさっきから、避難する時もずっと『激辛カレーのついたリュック』を両手で必死に抱きしめていたから、カレーの唐辛子成分(カプサイシン)が皮膚に染みて、ジワジワと熱くなっていただけですよ。私がカウントダウンしたから、あなたが勝手にビクついてプレッシャーを感じただけ……ただの心理的なカマかけ(トリック)ですよ」
「あ……」
「本物の『まぬけ』は、機内のハプニング(酔っ払いの暴走)に乗じて完璧な火事場泥棒を装おうとしながら、ありもしないハッタリ(最新科学)に怯え、自ら手を握りしめて証拠をアピールしてしまう犯罪者のことだよ」
成金男が機内の警備員によってパトロール席へと連行されていくのを見送りながら、ビック探偵はハーブティーを飲み干した。
「お見事です、ビック探偵ーっ!!」
カレーまみれの床から救出され、頭にジャガイモを乗せたスモール探偵が、目を輝かせる。
「君がバルブを開けてカレーの突風(ハッタリの舞台装置)を作ってくれたおかげだよ、スモール君」
ビック探偵は優雅に微笑むと、呆れ顔でスモールの頭のジャガイモを優しく摘んで機内のゴミ箱にポイと捨て、そのまま自分のファーストクラスのシートへと戻っていった。