恋愛小説 | ビックの部屋

ビックの部屋

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小鳥のさえずりと共に、ブラインドの隙間から差し込む眩しい朝日が、乱れたベッドのシーツを白く輝かせていた。

​僕はゆっくりと重い瞼を開けた。微かな疲労感と、それとは対極にある圧倒的な満ち足りた感覚。腕の中には、昨夜の情熱の余韻を残すように、僕の胸にすっぽりと収まって規則正しい寝息を立てる夏実の姿があった。

​透き通るような白い肌には、僕が残した赤い痕がいくつも散らばっている。それが、昨夜の出来事が決して夢ではなかったことの証だった。

​「……可愛いな」

​無意識のうちに声が漏れていた。彼女の少し乱れたブラウンの髪を指先でそっと梳くと、夏実は「んん……」と小さく喉を鳴らし、僕の胸にさらに顔を擦り付けてきた。その無防備な仕草に、朝から再び胸の奥が甘く疼く。

​「おはよう、夏実」

​優しく耳元で囁くと、彼女の長い睫毛がゆっくりと震え、やがて潤んだ瞳が僕を捉えた。寝起きのぼんやりとした表情から、次第に昨夜の記憶が蘇ってきたのか、彼女の頬がみるみるうちに赤く染まっていく。

​「お、おはようございます……健人さん」

​慌ててシーツを首元まで引き上げ、僕の視線から逃れるように顔を半分隠してしまう。その恥じらいがたまらなく愛おしくて、僕は彼女のおでこにチュッと軽いキスを落とした。

​「よく眠れた?」

「はい……。でも、なんだか恥ずかしいです。こんな、明るいところで……」

​照れて目を合わせようとしない彼女を抱き寄せ、僕たちはしばらくの間、朝の静寂の中でただ互いの体温と鼓動を感じ合っていた。

​「コーヒー、淹れるよ」

​ベッドから起き上がった僕は、自分の大きめの白いシャツを夏実に手渡した。彼女がそれを羽織ると、華奢な肩から少しずり落ちた襟元や、太ももの途中までしかない丈が、妙に色っぽく見えて困ってしまった。

​キッチンに立ち、豆からコーヒーを挽く。香ばしい香りが部屋いっぱいに広がる中、夏実はソファにちょこんと座り、膝を抱えながら僕の後ろ姿を見つめていた。

​「健人さんの部屋、すごく綺麗ですね。でも、なんだか……少し寂しそう」

​マグカップを二つ持ってソファに向かうと、夏実がふとそんなことを言った。図星だった。この部屋は、僕のこれまでの人生そのものだったからだ。必要最低限の家具だけが置かれた、ただ寝に帰るだけの無機質な空間。

​「……そうだね。君に出会うまでの僕は、本当に退屈で、ただ息をしているだけのモノクロの毎日だったんだ」

​隣に座り、コーヒーを手渡しながら僕は彼女の目を見た。

​「でも、あの雨の日に君のワインレッドの傘を見た時から、僕の世界は急に色づき始めた。君の笑顔、声、香り……すべてが僕の心に火をつけてくれたんだ」

​夏実はコーヒーを持ったまま、瞬きもせずに僕の言葉に聞き入っている。

「夏実。君は僕にとって、暗い世界を照らしてくれる太陽みたいだ」


​少し気恥ずかしいセリフだったけれど、それは僕の偽りない本心だった。マグカップをテーブルに置き、僕は彼女の空いた手をそっと両手で包み込んだ。

​「昨夜のことは、決して一時の衝動なんかじゃない。……僕の彼女になってほしい。これからもずっと、僕のそばで笑っていてくれないか」

​夏実の大きな瞳から、ぽろりと一粒の涙がこぼれ落ちた。

彼女は泣き笑いのような、言葉では言い表せないほど美しい表情を浮かべた。

「……はい。私でよければ、ずっと、健人さんのそばにいさせてください。私も……健人さんのことが、大好きです」


​その言葉を聞いた瞬間、胸いっぱいに広がった幸福感は、これまでの人生で味わったどんな喜びよりも大きかった。僕は彼女を引き寄せ、朝の光の中で再び深く、甘いキスを交わした。

​コーヒーのほろ苦い香りと、彼女の甘い花の香りが混ざり合う。

シャツ越しに伝わる彼女の柔らかな温もりが、僕の心を満たしていく。

​「夏実」

「ん……?」

「愛してる」

​唇を離すたびにそう囁くと、彼女は幸せそうに目を細め、僕の背中に腕を回して強く抱きしめ返してくれた。

​こうして、僕と夏実は正式に恋人同士となった。

僕の部屋の殺風景だった空間は、彼女の歯ブラシ、彼女のマグカップ、そして彼女の明るい笑い声によって、少しずつ温かく、鮮やかな場所へと変わっていくことになる。

​「夏実」という名の太陽を手に入れた僕は、この眩しい光を絶対に手放さないと、心の中で強く誓っていた。