七色のアーチに向かって25号の錘をぶん投げる
タンポポの綿毛がパーティーバルーンのように瀬戸内海一面を飾り、七色のアーチに白い色が加わった
こんなにはっきりとした虹は滅多に見れるものではないが、俺が今必要としているのは、虹ではなくカレイ・・・今晩の食料だ
待てども待てども一向に釣れる気配はない・・・・俺も魚もお供え物をもらえない地蔵のようにピクリとも動かない
人生初のデートで、雨の中2時間相手を待ち続けてる気分である
そして俺に話しかけてきたのは、デート相手でもなくカレイでもなく、年の頃なら40前後のオッサンだった
顔は東南アジアの人の様に浅黒く日焼けをしていて、チノパンにTシャツとラフな格好だ
誰もが釣り人に掛ける最初の一声「何か釣れたか?」とおもしろくもない挨拶
何も釣れていないのだから余計におもしろくない
ノビ太にテストの点数を聞くようなものだ
しかしこのオジサンは「なに狙いだ?」と聞いてきた
質問の違いで相手が釣り人かどうかわかるのである
おもしろそうなので少し話し込んでみることにした
言葉の節々に「じゃけんの~」とつく広島弁が中々かっこよく、まねしたくなってくる
最初は世間話から、次第に釣りの話に
俺の仕掛けや釣り方にいろいろとアドバイスをくれる
さすが地元のじゃけんオジサン、なかなか参考になるではないか
だからといって釣れたわけではないが・・・・
話はいつの間にか関東と広島の比較の話に飛躍していった
「広島の釣りはレベルがたかいけん」「関東で釣れても、こっちでは簡単にいかんけんのお」
「ルアーの釣りは広島が発祥なんよ」と、こんな感じである
・・・・・・・・別にどうだっていい
どうやら相手は相当関東に対抗意識を持っているようだ
関西人が東京に強い対抗意識を持つのと同じだろうか?
まだ俺が若かった頃、関西人と喧嘩になったとき、相手に「東京弁気持ち悪いねん」といわれ、俺もどう反応したら言いか困ってしまい、とりあえず相手の鼻とホオ骨をへし折っといた
今回は喧嘩をしているわけではないが、さすがに面倒になってきた
星が綺麗だとつぶやけば「関東ではみれんけん」と一言
もうどうでもよくなり、お礼をいってその場を去ることにした
ただ、ここで車内泊をする予定だと話してあったので、「戻ったら一緒に釣りしよう」と言われてしまい、戻ったらいませんようにと心の中で願いを込めて、笑顔で応答した
数時間後。。。戻ったときには仲間増えていた(涙)
面倒なので、俺は気がつかないjふりをして、車を離れたところに停めた
そしたらオッちゃん嬉しそうな顔をして俺のとこまで走りよってきた
ちょっと来いとお呼びがかかってしまった
今度は何で張り合ってくるのか・・・やれやれと思いながらついていくと、メバルが7尾あがってるではないか
今日の皆の釣果らしい
また自慢かと思いきや、これを全部俺にくれると言うのだ
実はさっきオッちゃんと話しているときに、食べれる魚を釣りたいと話していたのを覚えてくれていたのだ
おっちゃんの嫁さんらしき人がハッポウスチロールに氷とメバルを綺麗に詰めてくれた
更によく見ると、メバルの他にチヌ(黒鯛)の皮をはいで刺身になったものも入っていた
どうやら皆で釣った魚を俺にくれる為にその場で食べずに、とっておいてくれたらしい
更にオッちゃん一言
「どうや、広島人はいい人ばっかやろ~」
負けました 完全な敗北です
ぐうの音も出ないとはこのことだ
俺が広島県民をちょっと好きになったエピソードでした
頂いたメバルと黒鯛は刺身と塩焼きでしっかりとたいらげました
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