だいぶ長らく更新をおざなりにしてしまった。

どうやらやっとひと段落ついた模様。

今ホッピーを飲みながら、パソコンデータの整理をしている。

すると、私が大学時代に書いた文章が出てきた。

取り急ぎ、手抜きの一環として、これを使ってブログを更新したい。


夏目漱石の描いた主人公「坊ちゃん」を

『吾輩は猫である』の“猫”の視点から見つめるという題材だった気がする。

そもそも『坊ちゃん』を読んだことがない人には何がなにやらわかないかと思うが、勘弁していただきたい。

でもね、あの小説は絶対に読んだ方がいいよ。

現代の芸人の数十倍面白いから。



追伸

ますださん

戯曲『たちあがれ日本』についてですが、
私はもともと筆不精なので、「毎週何曜日に更新」というやり方はできない。

でも必ず最後まで書ききるので、気長にチェックし続けていただけますか?



それでは。


題名『吾輩は猫である』



 吾輩は猫である、と素直に言いたいものだ。というのは実際のところ、主人が人間なのか私が人間なのか、いまいちはっきりしないのである。

 主人は、動物である。それは主人の猪突猛進というか、要領が悪いというか、そんな性質を見れば一目瞭然だ。単細胞だ。正直言って、主人を動物に喩えるならば一番近いのはアメーバだろう。つまりは馬鹿なのである。

 主人の生まれは、東京だ。東京というと、日本国の首都である。首都というと聞こえがよく、田舎人の憧れの的だが、なんてことはない。ただの吹き溜まりなのである。その証拠に東京は、明治の現在にいたっても火事が多い。その度に、焼けた市街は近代建築とやらに立て替えられる。そうして燃えにくい石造りの街へと変貌していくのだが、まだ燃えていない市街にいたっては、ごみごみとした木造建築が立ち並ぶばかりで、火事による建替えを今か今かと待っている有様だ。

 まったくもって難解である。なぜ人間はことが起こってからではないと行動しないのだろうか。明治の時代になってもそんな風であるから、江戸人の思慮たるや、まことに虫の脳とでもいわなければならない。彼らは家を三年に一度は必ず焼き出されたという。それだけ火事が多いのである。彼らはその度に、苦笑い。「火事と喧嘩は江戸の華」だとかなんだか、よくわからないやせ我慢を言って、暢気に暮らしているのである。そんな状況の中、「宵越しの金は持たぬ」と、退廃的な思想に至り、毎晩毎晩飲んでばかりなのだ。

 はっきり言おう。これは地獄である。

 世は「文明開化」の時代だ。つまりこれまでのやり方は「文明」ではなかったのだ。唐人の言うところの「ノンバーバル」の時代であったのだ。察するに、幕府の崩壊はもの凄い変化であったはずだ。にもかかわらず、主人は自身のことを「江戸っ子」だとか、自称して、まだ「ノンバーバーバル」人への回帰を目指している。まったくの愚である。

 いやはや、私は安心している。東京を抜け出し、今は松山という田舎に住んでいる。ここはとても住みよい町だ。恋人もできた。花子という名前の黒猫で、住田の温泉宿の看板娘である。毎日私たちは散歩に行く。海岸線を歩いて、湯煙の中、日向ぼっこ。最高だ。東京にいたらこうもいかない。いつ何時、浮浪児がやってきて、私たちを煮て食わぬとも言い切れないのだ。東京とは、まことに生きた心地もしないような場所である。

しかし、松山に着てからというもの、主人の表情が晴れることはない。どうやら主人はここが気に入らないようである。町を歩いてみても、やれ、「麻布の連隊より立派ではない」とか、やれ、「神楽坂を半分に狭くした位な道幅」など、東京との比べっこばかりしている。私は主人にはっきりと言いたいのだ。自分の今いる場所を愛さない奴は、弱虫だ。そんな奴は、「いつでも帰ってやる」と逃げ腰でいながら、威勢ばかりはいいのだ。私は言いたい。「汝、隣人を愛せよ」と。しかし、私は喋れない。にゃーにゃー、と鳴くだけで、その言を受け、主人はやたらと、ごはんをくれるばかりである。

大体にして、主人はやせ我慢をしすぎだ。バッタを布団に仕込まれたときなど、彼お得意の論法に従えば、ただ、いたずらをした少年をぶん殴ればいいだけではないのか。それが彼の望むところだろう。それを会議だ、謝罪だ、なんだ、とうやむやにする。“責任の所在”をうやむやにしているのは主人自身ではないのか、と私なんぞは思ってしまう。まあ、人間の世界はそううまくいかないのであろうが、アメーバならアメーバなりの行動をとってもらいたいものである。

そのくせ、主人は部屋に帰ってくると私に向かって泣きごとばかり言ってくる。「天麩羅先生だってさ」「今日は団子だ」とかなんとか、力なく笑ったあと、最後の言葉は決まっている。

「清。家に帰りたいよ」

そう言うなり、泣き崩れるのだ。きよ、きよ、と、ここに移り住んで以来、何度聞かされたかわからない。私はきよという名前ではない。「たま」という立派な名前があるのだ。もとより、私はこの清という女の代わりにこの松山に来たようである。なんでもこの清という女は、女中、とやらで、一緒に住むのに金がかかる人種らしいのだ。主人は私の体を抱きながら、なおもこう言うのである。

「清、おれはわからないんだ。清、教えてくれ。おれは間違っているのだろうか」強く、きつく抱きながら、言うのである。私はか細く、にゃー、と泣いて、訴える。「暑苦しいからやめてくれよ」と。

そんなときには抵抗するが、私も、主人の苦しみをわからないわけではないのだ。彼は幼い頃に母親を失った。宙返りをして、あばら骨を打った彼は、母親に「御前のようなものの顔は見たくない」と宣言された。その三日後に、母親が死んだのだ。しかしこれも実は、何の考えもなしにやったことではないのである。主人は自分の宙返りを見せて、病身の母親の痛みを少しでも和らげてやろうと、道化に徹しただけなのだ。母親の笑った顔を見たかっただけなのだ。誰もが誤解をしているが、それが真相なのだ。

母親の死以降、彼はさらなる無頼の道に突き進み、兄を殴ったり、父親と口論したり、と自分がそういう役割の人間だと思い込もうとしていた節がある。そうこうしているうちに彼は家族から見放されてしまった。父親が死んだときなど、兄は遺産のおこぼれしかくれなかった。

早い話、捨てられたのだ。私の目から見ると、主人はまわりの人間に恵まれていないように見える。そんな彼を人間として扱ったのは、この清だけだったようなのだ。だから、主人が清を慕う気持ちは、私にだってわかっている。ただ、息が止まるほど強く抱くので、私も抵抗するだけなのだ。



 ある日のこと、主人が思い詰めた顔で帰ってきた。帰ってきたと思ったら部屋のごみ箱を蹴飛ばして、すぐにまた出て行った。それも夜の九時ごろのことである。その日以来、主人は同じような調子で、外出を頻繁にするようになった。あまり下宿によりつかなくなったのだ。七日目の深夜帰ってきた疲れ顔の彼は、私に向かってこう言った。

「清、もうすぐ会える。奴らに天誅を下したら、そしたら、おれは東京に戻る」

私はその切羽詰まった響きに、これはただごとではないと思った。天誅。東京に帰る。……私は無論、止めようとするのだが、にゃーにゃー、とうるさく騒ぎ立てるばかりだ。

結局のところ猫である私には、主人を止める権利も方法もないのだ。次の火の朝早く、私は花子のもとに行った。主人の言に従えば、近いうちに自分は、東京へと帰らなければいけない。せめてさようならを言いたかった。花子は温泉猫のため、毛並みがいい。いつも通り、海岸線を歩く。花子の黒毛が潮騒になびく。私は言葉を失っていた。花子がどうしたの、と何度も聞くが、私は、なにも言えないのである。会話は途絶えたまま、夜になった。一度も口を開くことなく別れ、私は家への道を歩いていた。足が重い。花子に会いに行かなければ良かった。後ろ髪を引かれるようだ。一目顔を見れば、心が静まるものだと、考えていた。だが、違った。花子と離れたくない気持ちは募る一方なのだ。松山の地からも離れたくなかった。主人が「神楽坂を半分に狭くした」と揶揄した大通りも、私は好きだったのだ。  

どこをどうやって歩いたかわからない。気がつくと、明け方になっており、私は下宿の前に立っていた。私は決心した。震えるような気持ちで、建物の中に入り、自室の窓から部屋に入った。

すると、荷物はなく、そこに主人はいなかった。

主人は東京に帰った。私は捨てられたのだ。それでいい。彼は彼のやり方を通した。私は私のやり方を通す。それでいいのだ。どうやら私はこうなることを望んでいたようだ。望んでいたからこそ、目が眩むような距離を遠回りして、明け方まで足を棒にして歩き続けたのだ。東の空に太陽が恥ずかしげに顔を出し始めている。私は畳の真ん中に丸まった。少し眠ることにする。日が昇ったら、ここにはいられない。


それ以来、主人とは会っていない。ほとぼりが冷めたら迎えにくるかもしれないと、少しだけ期待していたのだが、どうやらそうではないようだ。

猫は家に憑くものだ、と人は言う。しかし、主人と共に住んでいた東京の家を、私はもう覚えていない。部屋の間取りも、家の周りの風景も忘れてしまった。おそらく私にとっては、この松山こそが家なのだ。

最近では主人の顔さえぼうっとしてきている。それだけは、悔しいような、情けないような、気持ちがある。頭を振って、思い出そうとするが、どうしても思い出せないのだ。時々、きよ、きよ、と呼びかける主人の声だけ思い出す。ぼうっとした抽象的なその顔は泣いているのか、笑っているのか、わからない。                                                  

                                (了)








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もしこのブログを繰り返しチェックしている人がいたら

(そんな人はいないだろうけど)

すみません。

今週来週と仕事が忙しくなかなか更新することができなそうです。


本当だったら、明日から大阪に行くことになっていて、

日本のスラム「あいりん地区」を見て回ろう、もしあれだったら勇気を出して泊まろうと思っていたのに、

それも適わぬ願いになってしまった。


ああ! 三畳間、一泊800円、風呂なし、トイレなしの部屋で眠りたい……

そして朝から酒が飲みたい。


ああ!!


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参考ページ

『大阪DEEP案内』http://osakadeep.info/

(こちらのページの「西成の歩き方」シリーズで、あいりん地区の実態を詳しく書いてくれています。

なんておもしろいサイトなんだ。「日本で唯一暴動が起こる町」あいりん地区……興味深い)


○午前7:00


 幕が上がる。

 9時の方向に女。2時の方向に男。

 女、シャツにアイロンを当てながら、

 背中を向け歯ブラシをする男に笑いかける。


かの子: ねえ、駅前にタイ料理のランチバイキングの店ができたのよ。


一平: そうか。


かの子: タイスキとか、タイカレーやトムヤムクン、なんでもそろって2500円。どうします?


一平: どうしますって、なんだ。


かの子: 今日も遅くなるの?


一平: いつもどおりだよ。でも、ランチバイキングの話だろう? どうせ行けないじゃないか。


 かの子、渋い顔をする。 が、一平は鏡を見ていて気づかない。

 口を大きく開き、歯垢のチェックに余念がない。

 

かの子: ねえ、私の言うことは聞いてくれないっいうの?


一平: だから、ランチバイキングなんだから昼間仕事をしているおれには関係のないことだろう、って言ってる。


かの子: ねえ、そういう問題じゃないでしょう? 


一平: 少なくとも今おれはブラッシングをしているところ。ちょっと黙っててくれないかな。


かの子: まあ。


 かの子は手もとにあるシャツを持ち上げる。

 アイロンの形の焦げあとがある。

 かの子、シャツの焦げ目に向かい、ため息を吹きかける。


かの子: ねえ、ちょっとこれ見てよ。あなたの着ていく服がまっくろ!


一平: おや…まあいいよ。どうせドン・キホーテで買った一着500円のシャツなんだから。ちょっと待って、今ブラッシングに忙しい。今行くからちょっとだけ待ってくれないかな。


 (かの子、焦げたシャツを丸めて、手のひらでもて遊ぶ)


かの子: ねえ、私たち、別れた方がいいかしら。


一平: (振り返る)ちょっと待てよ。何でそんな話になるんだ。シャツが焦げたくらいでさ。


かの子: だって、あなた私の言うことなんて興味ないみたい。あなたは今、あなたの目の前の鏡に映る二枚目だと思い込んでやまない自分の顔が好きなのよ。もしくは自分自身の (ひと呼吸おいて) 歯が。


一平: おいおい、朝から勘弁してくれないか。これからおれが行くところをどこだと思っているんだ。戦場だよ、戦場。お前は朝のラッシュを知らない。満員電車に揺られる苦しみ。まるで貨物列車で運ばれているみたい。『戦場のピアニスト』見ただろう。映画。ナチスにさらわれるユダヤ人よろしく、おれたち電車に乗せられるんだ。


かの子: 私そんな映画見たことない…。


一平: おいおい。そうだ、デート。2回目のデートのとき見たじゃないか。覚えているだろう? ほら、フランクフルトを食べたじゃないか。お前はポテトフライがいいって言ったけど、おれがどうしてもフランクフルトが食べたいって言って。

ほら、思い出しただろう。映画を観たあと、お前、おいおい泣いちゃってさ。大変だったんだぜ。そのあとうちに連れてきて、おれはなぐさめるため、初めてお前を抱いた。


かの子: そんな記憶ないわ。誰かと間違っているんじゃない!


(一平、再び鏡に向き直る)


男: なに言ってるんだ、とぼけてるんじゃないよ。お前だろ。時間帯的に言えば、ねぼけている時間か…ははは。


かの子: 誰よ、それ、ねえ、誰。


男: お前だよ! ちょっと待って、ブラッシングしているんだから、ちょっと静かにしてくれないかな。


 (照明落ちる)




○午前8:00


 照明、落ちたまま。

 一平のナレーション。


誰も助けてくれない。人生なんてそんなものだ。見ろよ、この国を。泣けてくるぜ。まったく、せこせこせこせこしちまってよ。いったい誰がこんな国にしちまったんだ。

車だって、こんなに多いじゃないか。排気ガス出しまくって、世界の森林がわめいている。


…あ、お隣の津山さん、やばい、隠れろ!

あっ、こんにちわ。ええ、いい天気で。ああ、いつもこの時間ですよ。いや、サラリーマンですから。そうですね、はい。うんうん。なるほどですね。あっ、じゃあ、僕、こっちの方向なんで。いや、そんなので

は全然ないんで、いやいや、あっ、失礼します。


幸せってなんだろう。


金? いや、おれも年を取ったからわかるが、そんなものに価値はない。だったら何に価値がある?

そうだ…


やはり、ふれあいじゃないだろうか。

人間は人間とふれあわなければ幸せになれない。それは決して男女のふれあいじゃなくてもいいん

だぜ。同僚との、上司との、クライアントとの、ペットとの、飲み屋のおやじとのふれあい。

そうか、そんな小さなふれあいを積み重ねるため、おれは毎日まじめに生きているのか。


 (照明つく)


 満員電車。女1人を取り囲むように男6人が立っている。

 女はOL風、白のワイシャツ。胸元がはだけている。

 男、スーツ5人。一人だけジャンパーにジーンズといういでたち。

 男2と男3は親しげな様子で、ひっきりなしにしゃべっている。


OL風: ちょっと、やめてください。


男1: (けげんな顔をする)


OL風: いや、さわらないで。


男2: うんうん。それで。


男3: やっぱりさんまは出っ歯だから、小堺もネタにしやすいんじゃない?…(うんぬんかんぬん)


OL風: ちょっと。


男4: おいやめろよ!


 (一同黙る)


男4: (男5の手を取って)この手はなんだ!


男2: おいおい。


ジャンパー: 出たな。


男1: (けげんな顔をする)


男5: やめてください!(手を振り払う)


男4: やめて、はこの子の言葉だろ。お前、朝っぱらからなにやったんだ? 言ってみろよ。


OL風: (ふるえる)


男4: (一平を見て)ちょっとあなた。


一平: はい?


男4: 警察呼んで!


ジャンパー: よし来た! よしよし。


一平: はい?


男4: はい? じゃないだろう。警察だよ、警察。


一平: ちょっと待ってください。こういうことって、そんなおおごとにすることでしょうか? だいたい、警察に頼るのがよくない。今の時代、みんな国に頼り過ぎないんですよ。国に頼るより前に僕らにはすることがある。

共同体の樹立です。共同体っていうと、地域共同体、とくに、地方自治のように思われがちですが、違う。人が集まってそこに一定の秩序然としたものが生まれたら、それが共同体です。

僕らはこの西武鉄道に乗り合わせているわけだから、本来、今ここにあるべき共同体を僕はこう名づけたい。

「午前7:54分所沢を通過する西武鉄道通勤準急西武新宿行き乗組員による共同体」…と。


男4: それがどうしたんだ。わかったからさ、こいつを早く警察に突き出そう。私だって早く会社に行かないといけない。そんな時間がないんだから。

(男2と男3に向かって)ちょっとあんたたち、次の駅に着いたら降りましょう。こいつを警察に突き出すんだ。証言してくれますね?


男2: はあ、まあいいですけど。いいよな?


男3: いいんじゃない、楽しそうだし。会社には適当に行っておけばいいさ。


男5: いや、ちょっと待ってくれ。この人の言うことも一理ある。みんな聞いてくれ、一年くらい前のことだ。おれはうちの末っ娘に、『半年もの間変な男につきまとわれている』と告白された。

おれが言うのもおかしなことだけど、うちの娘は青山大学のミスコンで特別賞をもらうくらい、器量よしなんだ。最近元気ないな、と思っていた矢先のことだったから、おれたちはびっくりしてしまってね。気づいてやれなかったのが情けなくて情けなくて。しかもその男、だんだんエスカレートしていって、最近では家の近くまでつけてくるという。

もちろん、すぐに警察に行ったさ。そしたらどうなったと思う? 警察の野郎ども、『民事のことに警察は関われないので、具体的な被害が出たらまた来てください』だとさ。つまり、青山大学のミスコンで特別賞をもらうくらい可愛らしい大切な娘がキズものにされるまで黙って見ていろって言うんだ。おれは腹が立ったね。あの税金泥棒どもめ。

だからね、つまりね、何が言いたいかというと、そんな警察を信用してはいけないということだよ。


男4: おい、また変なヤツが出てきたぞ!


ジャンパー: いや…そうだ、オッサン。そうだよ! 警察なんかに頼っちゃダメだ。それで結局どうしたんだ?


男5: 八百屋の息子、古本屋の息子、魚屋の息子、土木屋の息子…近所の屈強な男たちを集めて交代で警備にあたってもらうようにした。探してみると世間には意外と「ヒマな息子」が多いもんだ。だからそいつらに、日替わりで娘に付き添って大学に通ってもらったんだな。

そしたら、魚屋の息子が娘にホレちまったみたいで、毎日娘に付き添って大学に通いだした。朝から晩まで付きっきりだよ。娘は『あの人はいつも死んだ魚のにおいがするからイヤ』と、慣れてないから差別的な発言をするが、じきに慣れるさ。第一、死んだ魚のにおいって、慣れたらすごくいいにおいなんだし。そのあとは見事に例の変な男も娘につきまとわらなくなったそうだし、めでたしめでたしだ。


男2: なるほどーそれはいい話ですね。確かにその話を聞くと、地域の連帯は大事だと思いますね。


男3: うんうん。


SE: (電車の発車ベル)

 男5、男4の手を振りほどいて車外逃げ出す。


男4: おい、待て! ちょっと開けてください。あいつ変態なんです!

…ああ逃げてしまった。あんたらが中身がない話をしているからいけないんだ。あんたも気の毒だね。


OL風: (笑顔をつくって)いえ、あの、どうもありがとうございました。


男4: こういうことはよくあるのかい?


OL風: ええ。実は。


男3: (小声で)あんな胸がはだけたシャツ着てるんだから、この女にも原因はあるよな?


男2: うん。おれも正直そう思うよ。しかし、女の子だってオシャレしたいもの。しょうがいないさ。(うんぬんかんぬん)


 再び、男2と男3だけひっきりなしに話をする。

 他のものは新聞を見たり携帯電話をいじったり。


(1分後)


OL風: いや。ちょっとやめて。


男1: (けげんな顔をする)


男3: またか!


男4: (ジャンパーの手をとって)おいやめろ! 




※「午前8:00」パート2につづく!