嫉妬 | たらちねの伝言

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日本の若い娘たちへ

たらちねの伝言 5

 

私は嫉妬しない。今は。かなり苦しんだ経験という薬が効いて健康体に戻った。私を嫉妬させた男は知り会ったときすでに彼女持ちだった。私はフリーだったが真剣な付き合いは望んでいなかったし、すごく年下だったから軽い気持ちで友達になった。ところが恐ろしく気が合う。一緒にいても何も気を使うことがなく、お互い好きなことを言えて、好きなことができる。そして何よりめちゃめちゃ楽しい。不思議な存在だった。言うまでもなくすぐに恋に落ちた。彼女から彼を奪うつもりは毛頭ないが、彼女を傷つけていたら謝りたい。私は悪い女だ。反省している。

 

私と旅行に行っても彼女の機嫌が悪いと彼は彼女と長電話して(なだ)めている。私は一人で待っている。やっぱり彼女が一番で私は二番なんだと(はらわた)が煮えたぎる。結局私とは楽しい時間だけで、彼女とのような絆なんてないんだと鳩尾(みぞおち)が痛くなる。そんな気持ちを何度も彼にぶつけたが、彼は見事に受け止める。うまい。私を決して離さないのだ。私は彼を愛さないことができず長いこと嫉妬に苦しんだ。そのうち彼女と別れるんじゃないかとどこかで思っていたが、苦しすぎて彼との未来を諦めて何度も彼から去った。そして何度も引き戻された。しかし最後は我が身をぶった切る思いで離れて一人になった。一緒にいても辛く、離れても辛い。壊れそうだった。

 

嫉妬の闘病生活を乗り越えしばらくして私は新しい人に出会って愛するようになっていた。そこに彼が彼女と別れてやって来た。人生はたまに意地悪をする。人生の綾は妙だ。心も体も千切れる思いで離れた経験は私を彼に返さなかった。でも姉弟のような感情が大きくなっていて彼との関係は友達として細々と続くようになった。いつも彼がいい女と幸せであるように祈っている。

 

去年、彼は体調が悪いから検査を受けると言ってきた。その後医師から白血病で余命まで告げられた。彼も私も泣いた。自分にとってどれだけ彼が大事か思い知らされた。しかし二度目の検査で治癒可能な白血病だと診断され、大泣きしたのが馬鹿らしく、嬉し泣きした。白血病にはいくつか種類があるらしい。最初の医者を恨む。兎に角、彼は私にとって今でも大切な人である。

 

若い娘さんたち、嫉妬をどう扱うかは自分次第だ。嫉妬に操られてはいけない。嫉妬するような状況の相手は選ばないほうがいい。とはいっても好きになってしまうのはどうしようもない。それなら覚悟してとことん愛しなさい。でも自分を傷つけてはいけない。彼を愛さないことができなくても、辛いなら離れることはできる。離れても愛し続ければいい。愛するということは一緒にいてイチャイチャすることだけじゃない。彼を自分の所有物にすることでもない。愛は辛くない。嫉妬は人間の心の作用だが、愛はそんな些末(さまつ)なものではない。嫉妬が波しぶきなら愛は深い海の底の水だ。決して波立つことはない。