桃井かおりと岩下志麻の真骨頂!「疑惑」(1982) | 映画の楽しさ2400通り

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知らない映画だったのに観たいと思ったのは、桃井かおりの主演作だから。
大好き女優ベスト20の中ではチャン・ツイィースーザン・サランドンと並ぶ13位でありながら、観ているのはテレビドラマが中心で本格的な"主演映画"はほとんどなかったのです(「もう頬杖はつかない」を観ていないのがいけないのですが)。

もうひとつの理由は松本清張原作の野村芳太郎作品であること。
大ヒットした「砂の器」は"好き"に毛が生えた程度でしたが、「影の車」は大好きな作品でしたし、そちらに出ていた岩下志麻とW主演というのも魅力的でした。

でやはり興味を持った相棒と一緒に観たのですが、映画としてはいささか残念な出来でした(※1)。その原因は野村芳太郎演出にあったように思います。

実際、主役二人を始め見馴れた役者たちの演技は期待に違わぬものでした。
鹿賀丈史小林稔侍内藤武敏らの演技はこなれてたし、丹波哲郎山田五十鈴ら大御所はベテランらしく場面を引き締め、あの森田健作さえそこそこ印象を残しました。
今一つ、と思ったのはステレオタイプな感じだった榎本明で、若い頃は未熟さもあったのかなと(※2)。そう考えるとあの息子も上手くなる可能性があるかも?

主役の二人ですが、まず岩下志麻は遅めの登場ながら貫禄十分。
個人的には大胆な濡れ場もこなす美人女優というキャラクターは特に好きではありませんでしたが、ここでの怜悧で堂々とした敏腕弁護士役は見事にはまってました
テレビドラマだったらシリーズ化してもよかったくらい。ですが時代的(1982年公開)に早かったのかもしれません。今ならかっこよく闘う女性が当たり前なのにね。

そして桃井かおり。
日活ロマンポルノ「赤い鳥逃げた?」への出演からテレビドラマ「花へんろ」や「コラ!なんばしよっと」、さらにはハリウッド作品「SAYURI」など、幅広い役柄をこなす彼女ですが、その中で一番振り切れた片方の極にあるのが本作の悪女役でしょう。
とにかくはすっぱで自分本位で何をしでかすかわからない女、というだけなら女優なら一度は演じてみたいと思う役かもしれませんが、桃井かおりが他の役者と一線を画すのは、すれっからしながら筋の通った一本気さと可愛らしさがあること。
どうしようもない女なのに(ある種の)男がにっちもさっちもいかなくなるくらい惚れてしまう、という設定に対する説得力が半端ないのです。

その女二人が共闘して、といえば「テルマ&ルイーズ」のようなバディムービーかと思われそうですが、この二人、決して相容れることがありません。
互いに強い興味とリスペクトを持ちながら、あまりにも異なる価値観と倫理観のため、バディになりきれない二人。それでももしまた桃井が何かしでかして裁判沙汰になったら岩下は喜んで(なのか仕方なくなのか)弁護を引き受けるに違いない、そんな印象を強く持ちました。

それなのに映画は今一つと感じてしまったのは、シナリオはテンポよく無駄なく作られているのに演出とカメラワークにリズム感がないから。加えて敵役となる警察・メディア側に魅力あるキャラクターがいない(検事役の小林稔侍を除き)せいだと思います。
それで個人的には☆ひとつ(好き)どまりなのですが、ようやく鑑賞できた桃井かおり純主演作品で「これぞ!」という芝居が観られた嬉しさゆえ、ご紹介することにしました。桃井かおりをあまり(テレビか助演レベルの作品でしか)観たことない方に強力お勧めです。

※1:当年度の日本アカデミー賞作品賞受賞。あれま。
※2:同助演男優賞受賞。ほんとに?

 

ブロトピ:2025/12/8