太陽の中の対決 Hombre (1967) ☆☆ | 映画の楽しさ2300通り

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1925年生まれのポール・ニューマンは、いわゆる西部劇俳優ではありませんし、脂の乗り切った4,50代のころはすでに西部劇が下火になりつつありましたが、それでもアメリカ人俳優らしく数本の西部劇に出演しています。

最も有名なのはロバート・レッドフォードと共演したジョージ・ロイ・ヒル監督の「明日に向かって撃て」ですが、この作品が典型的な西部劇とは一線を画し、西部劇の新たな時代を開いた(もしくはその終焉を告げた)作品であったように、その他の作品でも従来の西部劇ヒーローらしからぬ一風変わったキャラクターを演じています。

「左きゝの拳銃」では神経症に侵されたかのようなふるまいを見せるビリー・ザ・キッド、黒澤明の「羅生門」を翻案した「暴行」ではタフな極悪人を気取っていても実は小心な山賊、「ロイ・ビーン」では正義よりも本能のままに行動する自称「判事」、「ビッグ・アメリカン」ではビジネスマンとして成功しながらシッティング・ブルへの劣等感にさいなまれるバッファロー・ビルなど。「明日に向かって撃て」でも、時に小細工を弄しながら強盗団のリーダーを務めるも、撃ち合いの経験がない無法者ブッチ・キャシディを演じました(こうしてみると実在の人物が多いですね)。
本作では、ネイティブ・アメリカン(インディアン)に育てられ、彼らの哲学や生きるすべを身に着けた白人青年(実年齢では青年とは言いにくいですが)を演じています。

ポール・ニューマンと言えば、上記のような西部劇のみならず出演した多くの映画で、"体制"に属せず染まらずとらわれず、自分の意思を貫いて生きようとする一匹狼的なキャラクターを演じてきた人ですから、ここでも個性を存分に発揮。価値観をともにできない白人の集団を、もう一方の悪辣な白人集団の暴力から護る役を引き受けざるを得ない役を好演しています。

脚本のよさもあるでしょうが、他人の理屈や感情に流されることなく、自らの信念に基づき淡々と行動するさまに説得力があり、感情移入するよりもまず彼の世界観の中でどのように事に対処するのかの興味で惹き込まれます。
特に物語の序盤、ボール・ニューマンの透きとおるようなライトブルーの瞳とネイティブアメリカンの服装とのアンマッチが、それだけで彼の孤立と反骨を際立たせており、見事なキャスティングと感じました。
その辺り、「長く熱い夜」「青年」(未見)「ハッド」「暴行」などニューマンとのコンビが多いマーティン・リット監督の、見せ所を心得た演出の賜物でもありそうです。

原題のHombreは"男"を意味するスペイン語。守ろうとする人々からも敵からも孤立した、というより超越した存在の彼に対する敬意の印なのか、悪党一味の中で唯一の非白人であるメキシコ人ガンマンが名前を知ろうとするくだりが印象的でした。