ブラック・サンデー Black Sunday (1977) ☆☆ | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

この作品は公開予定当時、上映中止を求める脅迫騒ぎのため公開中止となり、当時450円だったロードショウ前売券がふいになったという、自分にとってはいわくつきの作品です。今だったら返金してもらったでしょうが、当時はあまりしっかりしていない学生でしたので、ただ涙をのんだのでした。
その後も映画館ではなかなか上映されなかったようで、そのあたりの事情はWikipediaでご確認ください。いずれにしても43年の歳月を経てようやく(DVDでですが)観たことになります。

そんな個人の事情はさておき映画の出来はというと、公開されなかったのは実にもったいない、と感じる力作でした。「黒い9月」こそ過去のものになりましたが、イスラエルとパレスチナの関係は未だに修復されておらず、アメリカもテロへの危機感を拭い去れていない現状ですから、絵空事ともいえない迫力もあります。

「ジョーズ」「ザ・ディープ」でタフな面を見せたロバート・ショウが好演。有能かつ非情な女テロリストを熱演したマルト・ケラーもよいですが、一番の見どころは、こういうちょっとサイコがかった悪役がどはまりのブルース・ダーン(「明日なき追撃」や「11人のカウボーイ」を観てみてください)。
ベトナム戦争中に捕虜(POW)となり、自己批判させられたうえで英雄として帰還した男の失望と自尊心、狂気ともろさを見事に演じています。その彼が翌年「帰郷」で同じような役柄を演じ、受賞さえ逃したもののアカデミー助演男優賞にノミネートされたのは興味深いです。

ジョン・フランケンハイマー(「大列車作戦」「フレンチ・コネクション2」など)のアクションはケレン味なくストレートかつ重厚で、テロリストのリーダー、ベキム・フェーミュが逃走を図るシーン、クライマックスの飛行船追撃シーンは迫力ものでした。
それにしても昔はボディアーマー(防弾チョッキ)が普及していなかったのか、銃撃戦で射殺(か被弾して無力化)される捜査官が続出するのが観ていてつらいので、人が傷つく映画を好まない人にはお勧めしません。フィクションなら大丈夫、という人向けです。