【ネタバレ】風の谷のナウシカ (1984) ☆ | 映画の楽しさ2300通り

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やっと観たんですか、と言われても仕方のないくらい、有名な作品ですから、書かれたものはいろいろとあるのでしょう。ファンが多いことは想像に難くありません。
 
ので敢えてそのテーマや感動について語るつもりはありません。巨神兵は核兵器を想起させ、腐海の設定には汚染された現代の環境に通じるものを感じましたが、そのあたりはすでに語りつくされているのでしょう。Wikiで確認できる原作との相違を読んで「ナウシカ」の世界の奥深さを知り、原作を読まずしてうかつに発言できないようなためらいさえ感じています。
なのでそうしたことをすっかり忘れた娯楽としての仕組みについて書こうと思います。

まず少女を主人公にしたこと、これは日本の漫画およびアニメを通じて特徴的であり、ここでも成功していると思いましたが、一方では戦闘の描写が主である展開の中ではかなり無理を感じました。
特に、飛行船からの機銃掃射のなかにナウシカが丸腰で突っ込んでいくシーン。青年兵が銃撃を拒否する(「間諜X-27」を思い出しました)感動的なシーンですが、ナウシカが都合よくかすり傷を負う程度というのはあまりにも無理。その神々しさ(?)に射手の手元が狂ったというのはよいとしても、機銃掃射ではめくら撃ち(失礼)でも被弾してしまう方がリアル。ここに限らず約束事とはいえご都合主義的なシーンが多いように思いました。
数多い(これも爽快で特徴的な)飛行シーンでも同様の都合の良さが見え、それゆえにハラハラ感が薄まってしまったと思うのは自分だけでしょうか。
 
実は同じようなことはリアルなアクション映画にも言えるのです。何度も同じようなことを書いているのですが、戦場のように弾の飛び交う環境にあっては流れ弾に被弾することもあり、行きるか死ぬかは運次第。刃物の時代と銃器の時代、地上戦と空中戦の時代では戦闘の質が大きく変わってしまった、ということが感じられない演出には、アニメであっても腹落ちできませんでした。
 
我ながらいささかピッキーだと思いつつ、腐海の地下に眠る浄化された世界の美しさに魅せられながらも、納得できないもどかしさの多さから愛することができない作品でした。