レイコはクニジュン㈱のOLである。
性格は、あまり細かいことを気にしない。言ってしまえばお気楽な性格である。
が、今日は上司であるミツヒデにこっぴどく怒られてしまった。
「お前、一体何年経理をしてるんだ!気がつかなかったら大変なことになっていたぞ。
顔がちょっと良いからって調子に乗るな!(爆)」
いつもなら笑って反論している私も言葉が出てこない。
確かに、今回のミスは流石の私でも滅入ってしまう。
ミツヒデが気付かないまま上に回ってしまっていたら大変なことになっていたのは容易に想像できた。
消えてしまいたい・・・
レイコは生まれて初めて、消えてえしまいたいと思っている。
トイレに閉じこもり、涙があふれ出る、
大佐に慰めてもらおう。レイコの彼氏でもあるMK大佐にラインを送る。
”今日会えるかな?会社で凄いミスをしてしまって落ちてるの。”
物の数分で返事が来る。
”どうした?落ちるとか珍しい(笑)20時には何とか帰れるかな・・”
”じゃー、9時にいつもの店で良いかな?ごめん、甘えさせて”
”OK!(笑)とりあえず、くよくよするなよ”
そして、レイコは19時に待ち合わせの店に来て、大佐を待っている。
今日はやけ酒かな・・・
既にジョッキを何杯も空けるものの昼間のミスを引きずっているためか一向に酔えない自分が居る。
大佐に慰めてもらいたい。
ミスをしない自分になりたいよ・・・
消えてしまいたい・・・
そう呟いた途端、激しい頭痛が起きた。
気を失うくらい。
いたたたた・・・いきなり何?
しだいに痛みも取れ、また飲みだす。
そして、待ち合わせの21時が過ぎたものの大佐はまだ来ない。
大佐が遅刻って珍しいな・・・レイコとは正反対の性格であり、今までこんなことはなかった。
大佐にラインを送ろうとする。
・・・あれ?
ラインに大佐の文字が無い。消えている?
電話帳を見る・・・MK大佐の文字が無い。
・・・あれ?冷静をよそうものの虫の知らせと言うのだろうか、今すぐ行動しろと心の中の私が叫んでいる。
それから急いで大佐の所へ向かった。
そこに、大佐はいた。
ドアの向こうで不思議な表情を崩さない大佐が居た・・・
私の知っている大佐は目の前にいる。
でも私の事を知っている大佐は目の前に存在していない事実があった。
放心状態という言葉。とにかく意味が分からないまま家へと戻る。
その途中で今度は、心臓が止まりそうになる出来事が起こる。
何故か私が歩いている。
はち会いそうになりとっさに身を隠した。
もう一人の私は何事もないように私の部屋に入って行った。
私は、パニクった。
私の事を知らない大佐・・・そしてもう一人の私。
私は、その場から逃げた。
いくら、気楽な性格といっても、もう一人の私に出ていく度胸もない。
そこから私は、数日マンキに閉じこもった。
当然次の日に、会社に電話をかけていた。
そう、私が居るかの確認をするために。
「おまたせしました。クニジュン㈱のレイコです。」
電話の向こうで、私の存在を知らないもう一人の私の声が聞こえる。
そんな気はしていた・・・
そして、頼りたい大佐はここにはもういない。
考えれば考えるほど気が狂いそうになる。
このまま消えてしまいたい・・・
レイコは、初めて口にしてしまった事をまた呟くようになっている。
日が重なるほど、呟く回数も多くなっている。
そして今日、久々に外に出ていた。
私に会わないところを選んで。
途中、私の事を知っている馴れ馴れしい人に声をかけられた。
ハッとしたものの、上手く会話を合わせたつもりである。
どうやらもう一人の私とこの後会うらしい。
気になったのが、その人と居た男性。
やたら警戒するように私の事を舐めまわすように観察していた。
・・・なんか、エロくて気持ち悪い(爆)
私は、存在している。
でも私の事は誰一人認識してくれない現実。
誰とも話すこともなく数日が過ぎている。
そして今日久々に声を出したが、もう一人の私に間違われただけである。
このまま、消えてしまいたい。
また呟いている私がいる。
寂しい・・・怖くて誰とも話せない。
やはり、マンキに戻ろう。
不意に肩を叩かれる。
「いた!探しましたよ!」
うれしそうな顔をしている知らない男性が立っている。
「え、ええ?あの、、、あなたは?」
「もう一人自分が・・・ですよね?」
「えっ?」
思わず声を張り上げてしまう。
なぜ?状況が整理できないものの私を認識してくれる人が居た。
「・・・あなたは?」
「多分、あなたと同じ、この世界に2人存在しているジーといいます。
もっと言えば、こちらの世界で存在するはずのない方ですが。」
笑っている。まるで、この状況を楽しんでいるかのように。
「私は・・・レイコと言います。」
そういうと、涙が溢れ出る。止まらない。
ジーに抱きついた。
そう、、、私を唯一認識してくれる、
この人を絶対離すものかと。
そして、同時刻。
「みるちゃん、あのね・・」
「どうしたの、えぬくん?さっきから何か変だよ。」
「いくしんさんが、話しかけた人ね、、、あの人も多分この世界に居てはならない人。」
「え・・・?」
「分かったんだよ!」
そう・・・ジーと同じく、えぬるぎも気付いた。あることに。
いくしんがきっかけになり、離れていた運命が静かに重なりあいだす。
気が向いたらつづく 汗