とある魔術の禁書目録×電脳戦機バーチャロン とある魔術の電脳戦機 鎌池和馬 感想 | 墜落症候群

墜落症候群

墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

とある魔術の禁書目録×電脳戦機バーチャロン とある魔術の電脳戦機 (電撃文庫)
鎌池和馬著
エディション: 文庫
価格: ¥ 724

5 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 これ一本でアニメ映画化して欲しいくらいのデキ, 2016/5/19

Amazonで購入(詳細)
レビュー対象商品: とある魔術の禁書目録×電脳戦機バーチャロン とある魔術の電脳戦機 (電撃文庫) (文庫)
 面白かったー!
 他の人のレビューにもあったけれど、最近の本編新約よりも読者が求める禁書の面白さが詰まっている感じ。
 まあ、人気ラノベシリーズが巻を重ねるごとに、作者の技能が増していって、読者のニーズよりも自分の表現を優先し始めるのってあるあるネタだし、最近の新約は新約で楽しめているけれど。どうしても異能バトルってインフレしていく中二設定が主眼になってしまって、新約の上条くんも何かとてつもない力を秘めたヤツみたくなっているし、大体の学園都市の連中はもはやそのバトルに噛むことすら出来ない。その割に本分は学生だから留年でピンチです、って感じでもあるから、立ち位置がよくわからない。
 今回、このコラボは禁書をアニメでしか知らないような人、あるいはバーチャロンの方のファンであるような人に、禁書ってこういう話なんだぜー、っていう部分を突き詰めて伝えるように書いているから、分かりやすい面白さが宿っているのかもしれない。
 これを読んで、そうだよな日常性って留年だぜヤバイぜ、みたいな唐突に挟まれる要素じゃなくって、主人公と周囲のキャラにおける人間関係で表現されるべきなんだよな、という基本を再確認した気分。
 主人公の上条当麻がいて、非戦闘員で腹ペコヒロインのインデックスがいて、エロでバカな日常の悪友である青髪ピアスがいて、事情通である土御門がいて、違う路線で人を救おうと足掻く行動派ヒロインの御坂美琴がいて、主人公には出来ない汚れ仕事や情報収集を行えるピカレスクな一方通行がいる。そしてもちろん、この巻を象徴する巻ヒロインもいる。ああ、ベタっていいなあ。
 後半の展開についても、オティヌスレベルとは流石に言えないまでも、学園都市が丸ごと融解するというクライシス、メインキャラも容赦なく生命を落としていくし、タイトルにも書いたけれど、映像化するとしたらアニメ映画になるくらいのスケールだよな、と思ったり。
 助けて欲しいと願う少女、その手を取ろうとする少年、それでも理不尽な世界のルール、何だかんだで悪どい手段で訴えかけるヤツって厄介だよね、という悪役。
 何となく禁書の面白さって、第一巻から確立していると思うし、このコラボは間違いなくいい意味で水戸黄門的な禁書。そして、当然、旧約第一巻から、文章の技量、破壊の範囲、どんでん返しの巧みさは進化しているワケだから、これは面白いと安心して膝を打つことが出来るだろう。
 惜しむらくはバーチャロン戦闘の決着が割とあっさり目なところだけれど、禁書の本領である少女の救済については二転三転してハラハラ出来たので良かった。

 ……にしても上条さんはどうしても一発殴らないと気が済まないんだなあ。そこも彼らしいけど。





とある魔術の禁書目録×電脳戦機バーチャロン とある魔術の電脳戦機 (電撃文庫)