マサの家庭内事情は複雑らしく
とにかく家に帰りたがらない彼をALIが引き受けたようなものだったが
マサと一緒に過ごす時間は
今まで漠然と抱えてきた言い知れぬ孤独から開放される安心感があった。
二人ともきっとこれは愛とは違う感情だとうすうす気付いてはいたものの
マサもALIもその幼稚な家族ごっこを楽しんでいた。
家族の話をするマサの言葉の端々には、なんとなく両親を毛嫌いしている様子が受け取れた。
ALIも家族についてを聞かれるのが嫌だったので、自分の心の傷と種類が似ているのかな
と勝手に思い込んでマサに同情さえしていた。
そんなマサの父親は、何か事業をしている人らしく
「お金だけはある」とマサは寂しそうに言ったことがあった。
あのバイトは彼にとっては単なる暇つぶしで、
彼の乗る車も携帯も、父親に持たされているものだと彼から聞いた。
欲しい物があればそれもやはり父親から渡されたカードで買っていた。
マサの物欲はすさまじく、欲しい服やCD、飲み代にスロットとどこか病的な感じにも見えた。
生きていく上で必要なものしか買ったことのないALIは
「どうしてお金もっと大切に使わないの?」と不思議に思い尋ねたことがある。
「親が俺を大切にしないから。」
マサの心は寂しさをお金で埋めるように出来ている。
彼の狂った金銭感覚は病的のレベルではなく、まさしく精神的な病気によるものだったのだ。
マサはずっと孤独の中を耐えながら生きてきた。
母親は自分が幼少の頃に出て行き
父親は事業で成功し金銭的に不自由のない生活を息子に与えることだけが生きがいだと思い
朝から晩まで外に出て働いてきた。
マサは小さな時からゲームやマンガ
その頃同級生たちが欲しがる全ての物を持っていたと自慢げに言う。
物さえあれば、友達はみんな自分から離れていかないのだ、と。
そんなおかしな友人関係と、母親のいない生活、自分の運動会にさえ来てくれない父親。
彼は父親から与えられるお金でその愛情を確認し
それを必死に消費することで寂しさと戦ってきたのだ。
そんなある日突如母親と名乗る女性が自分の前に現れて生活を供にするようになった。
マサが中学生の時だった。
母親は、マサの金銭感覚を責め、そうさせた父親を責め、置いて出た自分の罪を責め
今まで見ないようにしてきた何かを前に、マサも両親も一気に混乱した。
混乱の中、泣き叫ぶ母を血が出るまで殴り蹴り倒す父を目の前にし
彼は誰に聞くわけでもなく、父の暴力が原因で母が出て行ったことを悟ってしまった。
今まで自分のために働いてきた父親への尊敬の念
それとは反する自分から母親を奪ったことへの強烈な恨み。
小さな頃から会いたくても会えなかった母親を思い慕う心
それとは反する自分を置いて出て行ったことへの憎しみ。
マサは相反する心の持って行き場がないそんな時にALIと出会った。
ALIとなら、家族ときちんと向き合える気がする。
同棲生活も半年ほど経った頃。
マサはALIを両親に紹介すると言った。