マサは両親と心を通わせたいとずっと願いつつも、その方法がわからないまま
ALIと時間を共有することで現実から逃げてきていた。
実際マサの携帯にはいつも父親からの着信もあったし、カードの支払いが止められることもなく
彼は親元を離れたとは行っても
体が離れただけで精神的にも金銭的にも親に依存していたのだから。
なかなか戻ってこないマサを心配して、一緒に住んでいる子も連れてきていいから
外で食事をしようと提案したのはマサの母親だった。
ALIとマサは指定された料亭で、彼らと会うことになった。
会う前までは緊張していたけれど、会った瞬間ふたりともマサの話に聞くようなギスギスした
印象とは程遠くとても朗らかで優しく何の問題もない夫婦に見えた。
「まーちゃんが迷惑かけているようで、ごめんなさいね。」
マサの母親がもう随分と大きい息子をまーちゃんと呼んでいるのには多少驚いたが
それは後々になってわかった。
彼女の中では、まーちゃんは置いて出た当時のまーちゃんのままなのだということが。
叱るでも責めるでもなく、穏やかに和やかにこの場を過ごそうとしている彼らが痛々しくも思える。
マサはALIの隣でただぶすっとふて腐れたように、もくもくと食べ物を口に詰めていた。
「まーちゃんと暮らしていること、ALIさんのご両親は知ってらっしゃるの?」
どう答えるべきか迷った挙句、
「知りません。うちは放任主義みたいで・・・」
とALIは言った。
実際千代にも同棲している事など伝えていなかったのだから。
「お金の面は大丈夫なのか?」
少し恰幅のいいマサの父親が、会ってから何も言葉を発さないマサに尋ねた。
光熱費や家賃、そんなものは誰が負担しているのかずっと気になっていたんだろう。
「ALIもバイトしてるし、足りなくなったらカードがあるから・・・」
その頃マサは無職だったが、ALIはコンパニオンのバイトをやめてはいなかった。
マサは親父のカードで暮らせばいいとALIのバイトを反対していたが、
顔も知らない人のお金なんて使いたくないとALIは意地になってバイトを続けていた。
一緒に暮らし始めた頃
マサが買ってきた身の丈に合わないプレゼントもALIは頑として受け取らなかったぐらいだ。
「・・・もう、うちに戻ってきなさい。」
マサの母親は、食事の手を止めてそう言った。
「あなた達のやっていることはめちゃくちゃよ。もっと他に大事なことがあるでしょう。」
マサの母親がいう事は当たり前で正しい事だっただけに、一瞬にして空気が凍りついた。
ALIは気まずい空気をなんとかしようとお茶を飲んで一気に話し出した。
「ごめんなさい。マサくんは帰ろうとしてたんです、それを私が引き止めていただけで
そのうちずるずる一緒にいてしまってお互いに言い出せなくなっちゃって。
本当は帰りたいんだよね?そうだよね?」
隣のマサを見ながら意思確認をするようにべらべら言葉を並べたが
母親の言葉に気を悪くしたマサは突然席を立って帰ろうとALIの手を強引に引っ張った。
食事は中断され
ALIの手を引きずんずんと店を出て行くマサを彼らは追いかけてこなかった。
「マサ!!!痛いっ!!!」
店の外に出て腕を振り払った時、マサの目はALIへの怒りで満ちていた。
「俺はALIと居たいんだよ!!帰りたいなんて言ったことないだろ!!!」