一口食べれば、もう完結。
おしゃれなテラスより、
銀色のショーケース前で整う。
最近、買い出しルートに不思議なケーキ屋さんができたんです。
ケーキ屋さんといえば、パステルカラーの可愛い内装に、甘い装飾……なんて想像しますよね。
でも、そこはちょっと違う。
店名はどこか職人気質で武骨。
店内を覗けば、ショーケースの後ろには銀色の業務用冷蔵庫がバーンと控えていて。
一瞬、あれ、精肉店に来ちゃったかな? と、錯覚するほどの、潔いまでの飾り気のなさ。
でも、そこにある一本のチョコレートロールケーキが、私の常識を鮮やかにひっくり返してくれました。
ふわふわの生地の中に、これでもかというほど詰め込まれた濃厚なチョコクリーム。
そしてその中心には、生チョコがどんどんどんっと、手加減なしに鎮座している。
一口食べた瞬間、「ああ、そうか。飾らなくてよかったんだ」
私たちはつい、幸せになるためにはふさわしい見た目やそれなりの理由が必要だと思い込んでるところがあって。
キラキラしたデコレーションがないと、なんだか無防備な気がして、一生懸命に外側を整えようと力んでしまう。
でも、このロールケーキは。
無骨な冷蔵庫の前だろうが、精肉店のような空間だろうが、美味しいものは、最初から美味しい。
幸せも、それと同じ。 立派な理由や準備が整うのを待たなくても、今、この瞬間に「あ、美味しい」「幸せだな」と感じてしまえば、それで完結してる。
もっと努力して自分をデコレーションしなきゃという思考をほどいて、ただ中身の生チョコを堪能する。
そのホッとした気持ちがあるだけで、現実は最初から完璧だったことに気づけた。
おじさんぽい店名の、武骨なケーキ屋さん。
そこで出会った圧倒的な充足感に、今日も私の周波数は心地よく揺らされています。
おしゃれなテラス席じゃなくても、銀色の冷蔵庫の前で、世界はちゃんと完成してました。


