第二子が生まれ、まだ上の子も目が離せない中、私は子ども中心の生活になり、タケオとすれ違い始めました。

気づけば、もうタケオは私に魔法の言葉を囁かなくなっていました。
そんなことを思い出すこともなく、私は二人の息子たちとの日々を楽しんでいました。

タケオは毎晩帰りが遅かったので、子どもたちと会うのは朝早くに少しだけでした。
それでも、眠っている子どもをわざわざ起こすことはなかったので、同じ家にいながら会えなかったりもします。
そんな日々が続き、ある日長男が出かけるタケオに言いました。
「パパ、こんどいつくるの?」

それにはさすがにタケオもショックのようでした。
私を睨みつけ、無言で出て行きました。
「いってらっしゃい」
「パパにいってらっしゃいでしょ。毎日、太郎が寝てから帰ってくるから、パパと一緒に寝てること、太郎が知らないだけなのよ」
タケオに聞こえるように言ってみましたが、後ろ姿が徐々に小さくなりました。