やっぱり言わずにはいられないなぁ…(ガラスにぶつかるスズメの話) | アリス高崎障がい者就労継続支援

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群馬県高崎市にある障がい者就労支援施設です。
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安心感と楽しさと仲間同士のつながりの中での回復を一緒に目指していける、そんな場作りを心がけています。
悩みをゆっくり話せる個人相談の時間も大切にしています

 

 

 

やっぱり言わずにはいられないなぁ…

(ガラスにぶつかるスズメの話)
 



アリス高崎

ブログ担当Nです

 



ある日の週末…金曜日の夕方…最後のその日の仕事を終えて、

事務所を出て、部屋の鍵を閉めて、建物の階段の二階から1階の出口まで歩いていくその途中の【階段の踊り場】での出来事。


僕はその時、週末の仕事をやっと終えて、とにかく疲れきっていました。

やっとこれで家に帰れる…

とにかく一刻も早く家に帰ってベッドに体を横たえたい…

そんな想いでいっぱいでした…


そして僕は2階の部屋の扉の鍵を閉め、
1階の出口に向かって歩いていったのです。

1階と2階の中間にある階段の踊り場に

ガラス窓があります。

いや…正確に言うと、
窓ではないんです。

ガラス窓のように見えるけれど、
それは開かないガラス窓であって…
『窓ガラスっぽいようなもの』
…とでもいう感じのものです
(そういうのは何て言うのかな…? )



そこに小さな小さな小鳥のスズメがいたんです。


どこからこんな建物の中に入って来ちゃったんだろう…


その階段の踊り場の開かないガラス窓に向かって、
その小さな小さな小鳥のスズメが、出口を求めて、外に出ようとして、


何度も何度も


ガラスにぶつかっていっているんです



これは困った…



高いところでパタパタと飛んでいる小鳥を手で捕まえるということもできなさそうです


もし僕がこのまま、この小さな小鳥のスズメの横を通り過ぎて、
何事もないかのように1階の扉を閉めてしまえば…


時間は週末の金曜日の夕方…


もう来週の月曜日の朝まで、
このスズメは、この建物から出ることができなくなってしまうわけです…


…これは困った…


週明けの月曜日まで、ずっとこの建物の中に閉じ込められてしまったら……小鳥のスズメは…さぞかし困るでしょう……


月曜日まで何も食べられなかったら……さぞかしお腹を減らしてしまうでしょう…


このまま何日間も開かないガラス窓に向かって体をぶつけ続けていたら…どうなってしまうのでしょう…


なんとか1階の出口のところに小鳥を導いて、外に出してあげなければなりません



でも…この小さな小鳥のスズメを、
踊り場から1階の出口の扉のところまで導くのは…

…かなり難しそうだなぁ…

だってもう、この小鳥はガラスの向こうに、はっきりと外の世界が見えているわけだから…

そのガラスに向かってぶつかり続けていく行為は止められそうにありません…




これは困った…




見なかったこととして…横を通り過ぎてしまいたいような誘惑も…


ちらりちらりと頭をかすめました…


だって…その日のその時のその瞬間の僕は、もう疲れきっていて…
先ほども書きましたように、

一刻も早く家に帰って、
一刻も早くベッドに体を横たえたいと願っていたわけですから…



でもここで僕が見なかったことにして、1階の出口の扉を閉めて帰ってしまえば…

金曜の夕方のこの瞬間から来週の月曜日の朝まで…

この小鳥のスズメはこの建物から出られないわけです…


僕はそれから数10分間にわたって、

様々な様々な工夫をして、

その小鳥のスズメが自分の体をガラス
にぶつけ続けるその行為をなんとか阻止するようにして、

なんとかかんとか1階の出口に導きえるようこころみてみました…

…けど…


まぁ…どうやってもうまくいきませんね…


僕はその数10分間の間、
何度も何度も小さな小鳥のスズメに語りかけました、



「ほらほら、出口はそっちじゃないよ。」



「ほらほら、そんなふうに何度もガラスに体をぶつけ続けてたら、
体が痛んじゃうよ」



何度も何度も小さな小鳥のスズメに、諭すように語りかけました。



小鳥のスズメはたぶん日本語を知らないでしょう…

というか…それ以前に人間の言葉を理解できないでしょう…


だから僕がどんなに語りかけたって通じるわけはないんだけど…


最終的に


別に僕の言葉が通じたわけではないのは確かなんだけど

最終的に

小鳥はなぜか?…急に自分の身をガラスに打ち付けることをやめて、

突然、下方の一階のビルの出口に向かって飛んで行き、

外の世界へと抜け出すことができました。



とっても不思議でした



それはとっても不思議な光景に感じられました


なんでそんなふうに、
急に小鳥のスズメが出口の方向に気づいて、
出口に向かって飛んで行けたのだか、

僕には全然わからないんだけど…


とにかくほっとしました…


これで安心して家に帰れる…


これで安心して家に帰って、
ベッドに体を横たえることができる…



ところが……

外に出ていったその小鳥のスズメは、

スズメ本人も安心してしまったのか…

すぐに地上に降りて、一休みしてしまったのですが…

あろうことか…

信号待ちして止まっている車のタイヤのその下で、
一休みしてしまっているわけです…


信号が青になって…その車がちょっとでも動き出した瞬間、
小鳥のスズメはタイヤに潰されてしまいます…



「ほらほら、そんなところで休んでちゃいけないよ。
信号が青になって車が動き出したら潰されちゃうよ。
ほらほら、早くそこを飛び立って。」


僕は見かねて小鳥にそう声をかけました。


先ほども申しましたように…

この小鳥のスズメには人間の日本語は通じないわけだから…
僕のこの呼びかけが、

なにか意味があったとか、

なにか役に立ったとか、

そんな訳はあるはずがないんだけど…


でも小鳥は無事に、
信号が青になって車が動き出す直前に、
羽をパタパタと動かし、
また空に向かって飛び立っていきました。




ほっとしました…



これでやっと週末の最後の仕事が終わって、
家に帰ってベッドで横になれる…




………




福祉の仕事などで人と関わっていく時…

その、支援としての関わり方という意味合いで言うと、

「保護的な色合い」

が濃い人と

「自立を促す関わり方の色合い」

が濃い人と、

ものすごい大雑把に分けると、
この2種類に分けることができるかな?とも思います。

(母性と父性とも言えるかもしれないです)


必ずどの人にも両方の面があって、
バランスの問題として、
あくまで、どちらの色合いが強いかという位の感じかと思うんだけど。




そういう点で言うと僕は…

福祉的な支援の関わり方という点において…

非常に…
「保護的な色合い」
が強い人間だと思います…


いいか悪いかは、
簡単に言えるものでもないし、

時には、それがあまりよろしくない場面もあるでしょう


とにかく、
いいか悪いかは別として、

そういう、非常に保護的な色合いが濃い人間というのが、
僕の持って生まれた形というか、
性質なんだと思います。



良い悪いで言えば、
それが悪い方向に働いてしまうことも…時にはあるかもしれません


…まぁあるでしょう…


自分自身としても…振り返ってみると…あの自分のやり方はまずかったなぁ…甘かったなぁ…と思うことも度々あるわけです…


…いや……ほとんどそんな時ばかりです…



だからそのたんびに反省するんです


自分がバカだったなぁ…甘かったなぁって





でもしみじみと思うんですよね、



どうしたってこうしたって

僕はあの小さな小鳥のすずめの姿を見たら

同じように、同じ言葉を、掛けてしまいます



「ほらほら、出口はそっちじゃないよ。
そんなふうにガラスに体をぶつけ続けていたら体が痛くなっちゃうでしょ」


「ほらほら、そんなところで休んでいたら車にひかれちゃうよ。
早くそこを飛び立って」


どうしたってこうしたって…


そう呼びかけずにはいられないでしょう…

言葉にしなくたって…心の中でそう呼びかけずにはいられないでしょう…


呼びかけたって伝わらないってわかってたって…
心の中ででも、言わないわけにはいかないでしょう…



たとえそれがどんなに愚かであったとしても…


自分が甘かったなぁ…バカだったなぁ…って思うことがあったとしても…


性懲りもなく、性懲りもなく…


やっぱり


そう言わずにはいられないなぁ…