もうだいぶ前に読んだので、記憶があいまいになっていますが、柚月裕子の「風に立つ」の感想です。盛岡で機械化に頼らず家族経営の南部鉄器工房の二代目小原悟が主人公です。仕事一筋で家庭を顧みなかった父、母は苦労した上病気で死んでしまい、そんな父に少なからず恨みを持っている悟。
ある日、父孝雄が突然「補導委託」をすると言い始めるところから物語は始まります。補導委託とは、問題を起こし、家裁に送られてきた少年を、一定期間預かる制度
との事。預かり先での暮らしぶりを参考に、罪を犯した少年にどのような最終処分を下すか様子を見るための制度らしいです。一言の相談もなく補導委託を決めた父に、今回も悟は猛反発を覚えます。
預かった少年庄司春斗は、非行を繰り返したあげくに学校を退学になっていて・・・。父親はエリートで強権者、そんな夫に何も言えない母親という言うありがちな家族パターンで、読んでいて、何と言うか気持ちが乗って来ませんでした。
やがて春斗は、南部鉄器工房を手伝うようになって、興味を抱き始めるのですが、密かに封書を投函するという謎の行動を取ったり。何故父孝雄が、補導委託を引き受けたのか、「もう辛い想いをするのは嫌だ」と言ったその理由もイマイチ弱いような気がしたのは私だけでしょうか?最後は想像通り、息子悟が、父孝雄を誤解していたことに気づくという結末で 少々柚月裕子らしからぬ小説だったなと思ってしまいました(私にとってそれだけ期待値が高い作家なのです)