社会現象にもなった黒柳徹子さんの自伝記「窓ぎわのトットちゃん」の続編を読みました。何とあの空前のベストセラー出版からもう42年が経っているとのこと。信じられません。でも「徹子の部屋」や「世界ふしぎ発見」に出ている黒柳徹子さんを観ると「お年をとられたな~」と思います。それもそのはず、御年90才になられるようです。それにしては口調ははっきりしていて、お若い!

 

前巻では 主にトモエ学園でのお話だったように覚えていますが、本作では 戦争で親戚がいない青森へ疎開して苦労したこと。戦争が終わって東京へ戻って来て、香蘭女学校~東洋音楽学院へ進み、NHKの第五期劇団員生、そしてマルチなタレントとしての活躍が記されています。

 

前作では、トットちゃんを見守るトモエ学園の小林園長先生の存在が、とても大きかったと記憶していますが、本作では、青森へ疎開してからのトットちゃんのお母さんの黒柳朝(チョウ)さんのバイタリティに圧倒されました。黒柳徹子のいい意味での向こう見ずさは、母親譲りに違いありません。

 

オーケストラの首席バイオリニストのお父さんが出征してから、ひとりで家族を守り、東京大空襲後には生きるために、青森へ家族を連れて疎開。昭和20年当時の東京で生きるのがいかに大変だったかが、よくわかりました。トットちゃんたちは、いつもお腹を空かせていて、水をたくさん飲んだ事。疎開するための汽車に乗るのが、いかに大変だったか、バラック小屋での暮らし、食べ物の調達などなど、トットちゃんのお母さんの前向きな逞しい生き方は、本当にすごいとしか言いようがありません。

 

やがて終戦。東京にもどって、香蘭女学校、東洋音楽学院を卒業し、NHK専属女優として、創成期のテレビ界での活躍はここに書くまでもありませんが、私には NHKの「チロリン村とくるみの木」や「ブーフーウー」などの子供向け番組が、とても印象に残っています。あの頃はまだ白黒テレビの時代でした。そしてドラマも生放送の収録の時代だったんですね。毎週楽しみに観ていたTBSの「ザ・ベストテン」は、古き良きスター歌手の時代で、一時代を築いた番組でした。

 

仕事の他にも、ユニセフ親善大使としての活躍など、他の人とは一線を画す活動も継続していて、尊敬しかありません。最後の方には、向田邦子や渥美清らとのエピソードも書かれていて、私もまだまだ若かった昭和が懐かしくなりました(世の中は今、レトロ昭和がブームらしいです)。最後に、トットちゃんは、東京の山の手の裕福な家の生まれですが、そんなことを一切感じさせない、天真爛漫で自由奔放な一人の少女の物語でした・・・、そしてこの物語は、そんな少女の眼から見た昭和史とも言えると思いました。