別れた不倫相手の腕と暮らす「私」や、夫のくるぶしから植物が生える「花虫」。夜の世界に生きる女が、昼の世界に生きる男を、蛇になって頭から食べてしまう「けだものたち」などなど、彩瀬まるの新刊(と言っても出版は去年ですが)は、男女の不条理な世界を描く7つの短編からなっています。

 

第158回直木賞候補にもなっていましたが、(受賞は、「銀河鉄道の父」でした)、男女のピュアで不条理な愛の世界を描く本作は、「芥川賞」への候補のほうがふさわしいような気がしました。それと同時に、決して「本屋大賞」の候補には選ばれないだろう事は確実だとも・・・。

 

なぜなら、男女間におけるさまざま純粋な愛の形を描いているのですが、読んでいて決して面白おかしい本ではないからです。はっきり言って好き嫌いが分れる本である事は明瞭です。「売れる本」が欲しい「本屋大賞」とは真逆の一冊である事は明らかなのです。

 

ひとつひとつの物語が、彩瀬まるの独特の世界観に彩られていて、以前読んだ「骨を彩る」を思い出しました。彼女の書く小説は、いわゆる「売れる本」」ではないから、スマホ全盛のこの時代、彼女のような作家には受難の時代なのかもしれませんが、これからも「彼女独自の世界を描いていってほしい」・・・そう思って本を閉じました。