村山早紀さんの本は二冊目です。やはり前に「本屋大賞」候補になった「桜風堂ものがたり」を読んだことがあるのですが、あまりにもファンタジー過ぎるというか、作りものめいたストーリーだったので、感想も書かずにいました。正直、本作もあまり期待しないで読み始めたのですが、百貨店は、私の子供時代には 憧れの夢の世界・・・いわゆる「百貨店世代」とでも言えばいいのでしょうか?「デパート」ではなく「百貨店」は、誰にでも特別な存在だったので、懐かしい想いで読み終えました。
表紙のレトロっぽいイラストも 読み終わって再び見れば、星野百貨店のすべてがうまく描かれていて感心しました。どちらかと言うとファンタジー系は苦手ですが、この本は一人も悪い人が出てこない「大人のためのファンタジー」。たまにはファンタジーの世界も悪くないですね。
夜な夜な(?)百貨店に現れるという白い猫の伝説を縦糸に、時代の波に抗えず、閉店のうわさが飛びかう風早町の老舗星野百貨店の栄枯盛衰が描かれています。まあ、白い猫の真実が、少々ファンタジック過ぎるかな~とは思いましたが、謎の新人コンシェルジュ結子の存在と合わせてみれば、そうだったのかと納得できる仕組みです。
『空を泳ぐ鯨』
『シンデレラの階段』
『夏の木馬』
『精霊の鏡』
『百貨の魔法』
上記各5章から成っていて、今や高島屋くらいでしかみかけない新人エレベーターガール、いさな(ちょっと変わった名前)が メイン主人公ですが、各章それぞれに 宝飾売り場や、靴ショップなどの店員が主人公になって、星野百貨店のちょっといいお話が描かれています。
私自身、子どもの頃は 母に連れられて、姉と地元の百貨店に行くのが、特別な楽しみでした。大食堂で食べるお子様ランチや、屋上で乗り物に乗ったり、パーコレーターの自販機で、紙コップのオレンジジュースを飲んだり、子ども心に日常を離れた夢の世界でした。「デパートに行く」と言う事は、それほど子供にとっては特別なイベントだったわけです。今や、高級過ぎるデパートは、私にはお呼びでなく、娘もデパートに行くよりは、車でショッピングモールに行くことの方が多いわけで・・・。
最後の「百貨の魔法」で、結子を初め、すべての謎はつながり、従業員からも地元の人たちからも愛され続ける星野百貨店の物語、郷愁にかられながら、懐かしい想いで読み終えました。

