サクラを見て、
悔しい...、
ってバースくんがいった。
きれいとか美しいとか、
儚いとか切ないとか、
そういう感想は
よく耳にするけれど...
それは初めての言葉だった。
「どうして?」
私はバースくんにたずねた。
「なんかズルくない。
こんなにきれいに花開いて、
あっという間に散って、
しおれる姿なんて
まったく見せないで...」
「みんなできれいに咲いて、
みんなできれいに散っていく。
なんか悔しいな」
風が吹いて、
桜の花びらが流れた。
バースくんと私の、
頭の上に、
肩の上に、
薄紅色の花びらが
降り注ぐ。
バースくんと出会えて、
一緒に闘えて、
本当によかったと思う。
「バースくん、きて。
こっちにもあるよ、きれいな桜」