いっしょに生きる | 続・阿蘇の国のアリス
覚えているかい、アリス...


ぼくたちが
ひとりずつではなく、
ふたりでいっしょに
生きようと
決めたあのときのことを。


...うん、覚えてる。

火葬されるまえに、
パパが泣き叫びながら、
アスぺクタで
抱きしめてくれたときでしょう。




注:物語上、
呼び捨てにさせていただきます。

アンジュママ
「...アリスちゃん、
本当に最後まで
よくがんばったね。
苦しくてつらい最中でも
弱音のひとつも吐かないで」

アリス
「でもね、
死ぬのがわかったときは
みるみる涙が
たまっていったの...
それを見てパパは
あわてて雪見だいふくを
買いにいったわ。
きっと、死ぬ恐怖から
私を救おうとしたのね」


モアママ
「そう。雪見だいふくをね...、
あらためて聞くと素敵な名前ね」

アリス
「途中、何度も
気絶しちゃったけど、
パパが帰ってくるまでは
死ねないと思って」

しらす母ちゃん
「すごいね、アリスちゃんは。
アリスちゃんは
脳腫瘍との闘いの
真の勝利者だね」


もなか親分
「私は誕生日までは
絶対死なないと思ってた。
だって、アリスは
不死身なんだもん」

まさ師匠
「僕もそう思ってました。
アリスならできるって...、
誰もが願っていたからね」


さだはるパパ
「人も犬も、たとえ
ハンディキャプがあっても、
愛さえあれば
生きていけるのだと思います」

ルーニィ
「これからは、
アリスちゃんの魂が、
他者の命をつないでいくのね」

みあん
「人と犬との輝かしい到達点を
見つけたような気がします」

ロミオアイ
「アリスちゃんの魂は
パパとママの心の中に宿り、
決して忘れられることなく、
生き続けていくと思うわ」

チワワのママ
「私も今はうちの子が
幸せを運んできてくれたんだなあ
としみじみ思います」


「アリス、
またお友達がきたわよ」


「バラの香り...、キアラちゃんだ」


「そう、るーさんよ」




「これは、いつもさりげなく
応援してくれる陸ママさんから」


「病気と闘っている、
ロコちゃんのママさんから...」


「一度は会ってみたかったな、
ロコちゃんと、バースくん...」


「そして、
病気と闘っている、
なみさんとバッキーさん...」

「パパ、お願い、
なみさんを助けてあげて」

「わかってる、
みんなで協力して
なみさんを救うんだ」


「みんなと、
阿蘇の国で会えるなんて...
なんだか夢みたいだ」


「アリス...」


「アリス...、アリス...、
アリス~!!」

「...私は雪見だいふくを
口に入れたまま、
車に乗り込んだところで
力尽きていたの...」


「そう、最後の旅は
雪見だいふくを口に入れたら...
だったわ」


最初はなんの表情もなかった。

それが急に泣き顔になって、
こらえていた涙が数滴ずつ
頬をすべっていった。


最後にきみは泣きながら、
大輪の花が咲くように笑った。




ぼくはきみの身体を
何度も何度も
自分の胸にぶつけていた...


無意識のうちに
きみをぼくのなかに
とりこもうとしていたんだ。


虹の橋でも、
犬の国でも、
お空でもなく...


ぼくの胸でいっしょに
生きようと決めたんだ。


そんな遠くに
きみをやれないからね。


そうでしょう、アリス。


パパの胸に抱かれたら...

旅の始まりです。