夢のなかでもいいから | 続・阿蘇の国のアリス
強い寒気が流れこんだ火曜日。


せいらママが
私の服(ハニカム胴着)を洗って
持ってきてくれました。

「おはよう、アリス。
ほんとうによかった、白雪姫になれて...」


(ありがとう、せいらママ...)


嵐の雲が割れて、
ひとときの光がさしていました。


身体は不自由でも
意識ははっきりしていて...


あれが、
天空へと続く道...

「天使のはしご」だと
すぐにわかりました。


おととい、
7回の痙攣を起こして
死にそうになったというのに、
パパは私を連れて
もう旅に出ようとしています。

(あの先に行けば、
大好きな友だちに会えるのかな...)


吹雪の中、
「アリスちゃんを待つ、忠犬ムーです」。


「アリスちゃんがきたー!」


「ピクニックランチ♪ピクニックランチ♪」


でも、日のあたる時間は
長くは続きませんでした。


数十分から数分で、
私は暗闇のなかにもどって
しまったのです。

「アリスちゃん...?」

(・・・・・)


明るく光っていた瞳から
光りが失われ、泥のように
濁っていきました。






アリス、聞こえるかい...


ぼくが最期に
きみにしようとしていることは
後悔しないよ。

また同じ状況になれば、
きっと同じように苦しんで、
同じ選択をしたと思う。


さあアリス、一緒に走ろう。

夢のなかでもいいから...