森の声 | 続・阿蘇の国のアリス


「落ち葉で家が埋もれちゃう」


「パパ、さっきから何してるの?」


「屋根を掃いてるの...
危ないからじっとしといて」






「つぎは、雨どい...」


「ほら、きれいになった」


「見たい...」


「あっ!」


「フー子んち」


「桜のババ(トイレ)」


「アリスー!じっとしとけっていったろー!」


「チッ...」


「オーナメントに...」


「リースも飾った」


「落ち葉はフー子の庭の腐葉土にしよう」


「ママが帰ってきたら、
回転寿司にいこうっと」


「アリスには馬刺しを買ってあげるね」


※寿司虎


ある日、森の中から、
不思議な音が聞こえてきたの。


何だろうと思って
あたりに気を配りながら
歩いてゆくと突然、
空から木の枝が降ってきたわ。

じっとたたずんで
耳をすましていると、
森のあちこちで
まるでスローモーションの雨のように
木の枝が降ってくるの。


年老いた森が
少しずつ古い衣を脱ぎ捨て、
次の時代へ移ろうとしているみたいだった。


風が渡っていくたびに、
森の中はその不思議な音で
さらに満たされていったのよ。


きっとあの時私は...


植物たちの声、
森の声を聞いていたのだと思う。




「もう一度取り戻せるかな、私たちの物語を」


※2015年12月


「バサッ、バサッ」