私の絵本 | 続・阿蘇の国のアリス
土曜日、
酵素から立ち上がった私たちは...


「天国村」から
車で10分の場所にある
「黒川温泉」にいきました。


皆は観光案内所
「風の舎」に車を止めると、
すぐ前にある
「とうふ吉祥」に
はいっていきました。


そのときのことです。


車の中から、
風に揺れる木の葉のあいだに、
あたたかなピンク色の絵本を
見つけました。


日ざしのなかに開かれた
絵本のページを見ました。


それは一匹の犬の
幸福な一生を描いた物語でした。


子犬を買った中年の夫婦は、
臆病でおなかをこわしてばかりいる
ゴールデンレトリバーに優しく...


やがて生まれてくる
ひとりっ子の長女とその犬は、
姉妹のように育てられ、
ベッドをともにするようになります。


「ねえママ、
アニマルキョウ子ちゃん、
とうふいくつたべたの?」

キョウ子ちゃんは、
おかわり自由の湯豆腐を
10丁たべていました。


つぎに皆は、
ぬれおかきをたべながら
いご坂を下りました。




いくつかの四季を重ねて、
ふたりは無二の親友に
成長していきます。


でも、犬の時間と人の時間は
異なっていました。


犬は何倍もの早さで
年をとっていき、
いつかは少女に
お別れをすることになるのです。


ベッドの隅のいつもの場所で、
少女に抱かれたまま
この世を去る朝。


ゴールデンレトリバーの顔に
満足そうな表情が浮かんでいました。


さようなら、ともだち。


いっしょに遊べて、
すごくうれしかった。


引き込まれて読み終えて、
自分が涙を流していることさえ
気づかないまま、私は思いました。






「アニマルキョウ子ちゃん、
ぜんざいのあと玉子3個たべた...」


これはまるでホーちゃんと
私のお話しみたい。

この絵本はだれかが、
私ひとりのために書いてくれた
絵本なのかなあ。


私は薄い絵本を胸に抱き、
晩ごはんまでにもう一度
読み直すつもりで、
おうちに帰りました。