ぼくも深呼吸した。
ぼくたちは恐ろしい真実を少しでも、
先に延ばしたかったんだ。
そのあと、
ぼくは生まれてから
一番勇気のある犬を見た。
きみは意思の力でしっかりと歩き、
そして、オシッコをしたんだ。
けれど、
その前にぼくが示した勇気も
きみに負けなかったと思う。
真夜中の森のなか、
1時間近くきみを支えていたのだから。
ぼくは涙をぬぐい、きみの頭をなでた。
愛らしい頭のなかの脳腫瘍を
きれいに消してしまうように、
ていねいに。
きみはありがとうといって泣いた。
ぼくもありがとうといって泣いた。
ぼくはくたくただった。
身体はひどく疲れているのに、
心は異常なほどの熱をもっていた。
きみはもういつもの
アリスにもどっていた。
ついさっきまで、
ぼくの胸をびしょびしょに
濡らすほど泣いていたのに、
平気な顔でいう。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20171030/20/alice-in-aso/3a/ba/j/t02200165_1815136114059593628.jpg?caw=800)
「ねえ、パパ。
つぎは、高い馬刺したべたいな」
高いのところだけ強調して、
きみは笑った。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20171030/20/alice-in-aso/ce/a8/j/t02200165_1815136114059593907.jpg?caw=800)