魔法のボタン | 続・阿蘇の国のアリス
「アリスちゃん、可愛い!」

ジャスママさんと
だんでぃらいあんさんにも言われた。


ジュジュかあさんも、
ビームさんも、るーさんも、
せいらママもホーちゃんも言ってた。

ミナコお姉ちゃんも、
ジンジャーママも...。


その言葉に、嘘、偽りはないと思う。

日頃から熱烈に想われていることぐらい
わかってる。


「コッ、コッ。クッ、クッ。
アリスちゃん、お・は・よ♪」


でも...この醜い顔で?




変ってしまった卑屈な性格でも?


「ねえ、パパ...。
私、可愛くないよね?」

「ううん、可愛い。
前よりもずっとずっと可愛い。

アリスのことを可愛いって
言ってくれる人たちは、
きっと、アリスの魂を見て
言っていると思う。

どんなに顔が変わろうとも、
アリスの魂は変わらないから。

甘えん坊で怒りん坊。
とっても強くて、優しい。
おまけに美人...それが、アリスだもの。

たとえ、
姿が見えなくなったとしても
それがアリスだよ」


すべての人に
魔法のボタンがあればいいのに。


左のボタンを押すと、
透明になって、
その場の誰からも見えなくなる。

右のボタンを押すと、
身体は石になり、
つぎに誰かが押すまで
固まっていなければならない。

透明になれるのなら、
病気の悲しみも
透きとおって軽くなり、
ひとりで泣いているところを
見られずにすむ...。

石になれれば
じっと固まったまま、
悲しみを結晶化させ、
心の奥深く沈められる...。