この夜が、ずっと明けなければいいのに | 続・阿蘇の国のアリス
2015年11月






私もバースくんも、
もう二度と、
あの幸せな頃に戻ることは
できないの?


気がつくと、
いつの間にか流れ出した涙が
枕を濡らしていました。


パパが、指先でその涙を拭い、
何も言わずに、
私の背中をトントンと
静かに叩きました。

「パパも悲しいの?」

「うん」

止まない雨はない。

明けない夜はない。

使い古されたそのフレーズが、
今さらのように嘘っぽく思える。


「私、もう子供じゃないよ」

「知ってる」

それでも、
パパはその仕草を止めません。

パパが側にいてくれる。

何でもわかっているくせに、
黙って側にいてくれる。


幸せ。

悲しいくらい幸せ。

悲しい?

どうして幸せなのに
悲しいなんて思うんだろう?

私はその理由から目を逸らして、
パパの胸に身を委ねました。

誰にも邪魔されることのない
ふたりっきりの夜。


この夜が、
ずっと明けなければいいのにと
祈りながら。