しずく | 続・阿蘇の国のアリス
灰色の空には無数の雨が
とまっています。


顔をあげて、
そのうちのひとつを選び、
そのしずくが
アスファルトに落ちるまで、
必死に見つめる。


山風に流され、ほんの一秒。

雨粒は大地に落ちました。


数秒で空の遥か高みから舞いおりて、
この汚れた大地にぶつかる。

それがぼくたちの命なんだ。


どんな場所に落ちるか、
どんなふうに砕け散るか。

なんの予想もできないまま、
風にまかれてほんの数秒を生きる。

それが人の一生。


ものすごくあわて者のアリスは、
ぼくよりずっと早く
地面に落ちてしまうの?


でも、もう時間差など気にしない。

ぼくに残された時間だって、
たいした長さじゃないんだ。


いつか、ぼくが
そっちにいくことになったら、
またいっしょに暮らそう。

ふたりでひとつの水になり、
幸福で世界を濡らすんだ。