まだ見ぬ大ものを釣ってみたい。
野生に磨かれた、美しい魚を釣ってみたい。
尽きることない、そんな思いが、
私を旅へと誘うのだ。
細山長司

椎葉村の中心を流れる耳川には、
平家マスと呼ばれる魚が泳いでいます。

下流のダムで育って遡上してくる
湖産型のサクラマスのことで。
この時期の耳川には
丸々と太ったヤマメとが
混生しています。

今月5日、
肺炎のため亡くなられた
釣聖・細山長司さんも、
阿蘇市在住の笹田さん
「山女魚道」の案内で、
1999年7月、耳川を訪れています。

これが、平家マスです。

これは、ママが釣った耳川のヤマメ。

これは、ワタナベくんが釣った平家マス。

「パパも早く、
平家マスを釣ってくださいね」

「さ、さ、早く行きましょう!」

「アリス、待って!
アリスには新兵器があるから...」

「...テッテレ~♪」

「これ、なあに?」
「降下用ハーネスだよ」

「これがあれば、
どんなところでも一緒に行けるよ」

「でも、パパが疲れちゃうよ」
「なに言ってるの、これくらい。
アリスやママ、それに、
病気と闘っている子たちや人たちが、
いったいどれだけ
がんばっていると思ってるの...」

「それにしても重い...」

「歩きにくい...」

「おまけに、釣れない...」

「さらに、釣れない...」

「アリス、悪いけど降りてくれない」

「チッ...」

「チッ、チッ...」

「そんなに怒らないの。
ハーネス外して自由にしてあげるから」


「パパ、がんばって!」

「静かにして、魚が逃げるから」

「きた!」

「やったね♪」


「またきた!なんだ、ウグイか...」

「ねぇパパ。次は平家マスだね」

「あ、あ。次は平家マスだ」
