酵素風呂へ | 続・阿蘇の国のアリス
「私は脳腫瘍が
アリスの選んでくれた、
私たちへの最後のプレゼントだと思う」


「犬はいろいろな形で
命を終えるよね。
事故や災害で亡くなる犬もいるし、
突然命を落とす犬もいる」


「でも、アリスの病気はそうじゃない」




「悲しくて、つらいけど、
ゆっくりとアリスの死を受け入れる
余裕をくれた。
脳腫瘍も、そして私のがんも、
悪い病気じゃないような気がする」


田の原のバス停からは、
待っていてくれたカナちゃんが、
実家まで道案内してくれました。


小国杉を抜け、高原を走り...


山頂に近づくと、
カナちゃんの実家と
酵素風呂のある、
ビニールハウスがありました。


カナちゃんの両親に
ご挨拶をして、
たくさん水を飲まされたあと、
私は酵素のなかに埋められました。


「アリちゃん、がんばって治そうね」


「神様。生きたまま埋められています...」


「熱いです。どうか助けてください。
犬は初めてなのだそうです。
私を使って動物実験をしているのです」


「チッ...こいつら
よってたかって私を殺す気だ」


私が埋められていた10分間。
カナちゃんのおかあさんは、
酵素風呂の自慢をしていました。


「あなたは何がん?...肺がん。
肺がんはすぐに治るよ。
先日、末期の肝臓がんの人も
がんが消えて今はとても元気になったの」


「他にもたくさん治ってる。
スズメバチに刺された人も、
骨折した人も。
うつ病の人もみんな治った」




「あれが、酵素。一樽10万はすると思うよ」


「なかにはマコモが入っている。
渡り鳥は、旅の疲れを
マコモのそばでとるんだけど、
きっと、体にいいことを知っているのね」


「それから動物は、
体が弱ると土を掘って
そのなかでじっと体の回復を待つの。
きっと、微生物か何かが
体を治してくれてるの。
だから、酵素風呂も
心と体にとってもいいのよ」


私はそのあとも、
酵素の上に寝かされたままでした。

「アリちゃん、マッサージしてあげるね」


不思議です...
あんなに熱かった酵素が
今は心地良いのです。




ここは地上の天国のような場所です。






「すっぴんだから撮らないで」


「がんばったねアリス。おりこうさん♪」


ママと私、目と目を合わせ、
どちらからともなく微笑みました。


私の心は
とろけるような幸福感で
満たされていました。


「カナちゃん、ありがとう」


「アリスパパといっしょにお風呂に入りたい」


「ねぇ、次はいつ来るの?」
「そうだね...」