高校時代の同級生で
34年もつきあっていたのに、
実際に一番しあわせだったのは、
肺がんのあとの二年間だなんて...。
病気のせいが
大きいのかもしれないけれど、
私たちの心が
ぴたりとフィットしたみたい。
自分と他人の区別はなくなって、
男と女の違いもなくなったみたい」
「チュルル、チュルル」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170307/23/alice-in-aso/e4/02/j/t02200165_1815136113884775946.jpg?caw=800)
病院に着くまでの時間に、
彼女はそこまで話すと、
浅い眠りにつきました。
僕はできるかぎり
彼女の乾いた手をにぎっていました。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170307/23/alice-in-aso/fd/17/j/t02200165_1815136113884775948.jpg?caw=800)
病院に着いてからは、
時間はじりじりと流れていきました。
血液検査と、
八カ月ぶりのCT検査の結果がでる
午後一時までの二時間が
一日のように長く感じました。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170307/23/alice-in-aso/07/b8/j/t02200165_1815136113884776333.jpg?caw=800)
どれほどあせっても、
彼女にしてあげられることは、
なにもないのです。
「アリスママどうぞ」
彼女は顔をあげて診察室に入りました。
ひとりで生まれ、
ひとりで育ち、
いつか想像もできない場所と時間に
ひとりで死んでいくのが、人間なんだ...
彼女はそう心に刻み込んでいるのです。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170307/23/alice-in-aso/be/59/j/t02200165_1815136113884776337.jpg?caw=800)
「CT検査も順調です。本当にいい薬ですね」
主治医はさらりと言い放ちました。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170307/23/alice-in-aso/62/fc/j/t02200165_1815136113884776340.jpg?caw=800)
帰りの車で、
僕が彼女の手をにぎろうとしたとき、
てのひらにあたたかなものが
落ちてきました。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170307/23/alice-in-aso/58/50/j/t02200165_1815136113884776334.jpg?caw=800)
「僕には見えるよ。
今の薬は長く効く。そのあとの薬も長く効く。
別に予言とか、夢とかじゃなく、
実際にそうなるんだ」
僕がいうと、
彼女の涙はとまらなくなりました。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170307/23/alice-in-aso/e6/fc/j/t02200165_1815136113884776930.jpg?caw=800)
「アリスもきっと、そうなるわ...」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170307/23/alice-in-aso/87/f3/j/t02200165_1815136113884776931.jpg?caw=800)
彼女の涙がとまらなくなったのは、
アリスのことを思って泣いていたんだ...
僕はその言葉で
ようやく気がつきました。
「ただいまアリス。あなたを愛してる」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170307/23/alice-in-aso/ba/99/j/t02200165_1815136113884776935.jpg?caw=800)