熊本のペットクリニック2-2 | 続・阿蘇の国のアリス
月曜日の午後に
三人がでむいたのは、
熊本のペットクリニックでした。

「38.7℃...。
熱はないようですね。
それに、ワンちゃんは風邪を
ひきませんよ。
ワンちゃんが風邪をひく場合は、
他のワンちゃんから
うつされることがほとんどです。
アリスちゃんはどうやら、
脱水症状を起こしているようですね」


「ワンちゃんが一日に必要な水分量は、
40ml×体重なので、
アリスちゃんは
一日一リットルは必要です。
弱ってきて水分がとれなくなったので
水分が足りなくなったんでしょう。
今日は、皮下点滴をしておきますね」


「じつは、うちにも
ゴールデンがいたのですが、
13歳のとき、アリスちゃんと同じ
脳腫瘍で亡くしました...」

点滴が終わる頃、
先生がささやくようにいいました。

同じ病を抱えた子を持つ夫婦が
心をかよわせるのに
時間はかかりませんでした。

「先生、アリスは今、
どういう状態なんですか?」

「現実と夢のはざまを
行ったり来たりしている感じですかね」

「それじゃ、まるで、
不思議の国のアリスじゃないですか」

パパは一瞬だけほほえんでいいました。


「先生、新しい家族に会わせてください」


「ほたてちゃん、大きくなったね。
いつか、阿蘇においで」

「行くよ、アリスママ。必ず行く」


点滴を受けた私ですが...


早速、おなかがすいてきました。


「わたしがどれだけ
がんばられるか見てて。
全部、ママとパパのためだからね」


あたたかな夕陽の中、
私は歯を食いしばって食べました。


パパとママも食べました。




涙をふいてパパはママに笑いかけました。

「よし、帰ろう」