熊本のペットクリニック2-1 | 続・阿蘇の国のアリス
きょうの私は、
遅めの朝食を
全く食べませんでした。
きのうも食べていないのに、
もう、食べる気がしないのです。

「いらない...赤牛ステーキなら食べる」


トイレはできました。
ヤキトリが応援に来てくれたからです。

「コッ、コッ。アリスちゃんがんばれ♪」


「フレー!フレー!アリスちゃん!」


「フレー!フレー!アリスちゃん!」


「できたー♪」


トイレがすむと、
私は境界の桜にもたれかかりました。


「ハァ、ハァ、ハァ...」


「ハァ、ハァ、ハァ」


「コッ、コッ。
アリスちゃん、しっかり」


世界が丸々漂白されたようです。

冬の日ざしを浴びた
花々でさえ白茶けて、
本来の豊かな色彩を
失ってしまっています。

「世界はふるい映画のように
モノトーンになっちゃった...」


「私が死んだら、
この桜の木の下に埋めてね」

疲れた笑顔で、
私はヤキトリにいいました。

「コッコッ...
なにいってるの、アリスちゃん」


パパとママは
意識がもうろうとしている私を
車に乗せると、
高速道路を急ぎました。


到着したのは、
熊本のペットクリニックでした。

「先生、アリスを頼みます!」


明るい陽光の差す病院で、
私はぎりぎりまで追いつめられていました。


「先生、アリスがとうとう
食べなくなりました。
息も浅くて、なんだか熱そうにしています。
雨に濡れて風邪でもひいたのでしょうか」

パパが早口でいい終えたとき、
ひと粒だけ涙が胸に落ちました。


私とパパ、ママ...
どちらも文字通り命がけなのです。