生と死 | 続・阿蘇の国のアリス
「コッ、コッ。
アリスちゃん、まだかな」


「パパ、おはよう、まだ眠いよ...」
「だめだよ、毎日寝てばかりじゃ」


「コッ、コッ。アリスちゃんおはよう」
「ヤキトリおはよう...」


「カクッ...」


「あれ!?」


「たいへんコッコー!
アリスちゃんが死んじゃったー!」


「アリス、たぬき寝入りはよしなさい」
「チッ...」


「コッ、コッ。
アリスちゃんに無理させないでね」


ヤキトリに見送られて、
久しぶりに旅に出ました。


行く先は、祖母山系と
阿蘇外輪山に囲まれた
「陽目の里」です。


「ここには、
アリスの天敵の
猫がたくさんいるから、
元気が出るよ~♪」


「アリスちゃん、久しぶりニャ~」


「アリス、ほら、猫だよ!」


「猫を見せても、ダメか...」


「アリスはぼくたちの顔、見えてるのかな?」


そのとき不思議な感覚が
風のように私の全身をつかみました。


いつか、そう遠くない将来。


私は棺のなかに
静かに納まることでしょう。

その姿がありありと見えます。


死後私はあきらかに笑うでしょう。


大好きなパパとママが、
私の顔を覗きこんで
くれているからです。

「そんなに泣かないで...」


この二人に抱かれて死ねるなら、
死は少しも怖くありませんでした。


「アリス、がんばれ。アリス、がんばれ」

やがて、
パパとママの目が
真剣になっているのがわかりました。

どうやら私は、夢を見ていたようです。


「生と死」、
普段からきちんと考えておけば、
何を慌てることがあるものか。


「パパ、ママ、見て。梅の花がきれい!」