ヤキトリはどこ | 続・阿蘇の国のアリス
目が覚めて、外に出ると...


ヤキトリの羽毛が、
散らばっていました。


「まさか...!?」

私は必至でヤキトリを探しました。


「ハッ、ハッ、ハッ...
どこにいったの?ヤキトリ...
イエヤスに襲われたの?」


イノシシ林を抜け、
リンドウ畑を横ぎって、
危険なワナの森までゆきました。




「ハッ、ハッ...ここにもいない」


「ヤキトリ...」


とうとう、
別荘地を見渡せる
クヤシカの田んぼまで
来てしまいました。


「サヨナラだけが人生だ」

目を赤くして、おうちに帰ると...


なんと、ヤキトリがいました。

「コッ、コッ。
アリスちゃんどうしたの?」


「ううん...なんでもないよ。
生きててくれてありがとう」


私はホッとすると、
イノシシ林に戻り、
忘れていた
バナナのようなフンをしました。

「ワンケロさん、ロコママさん...
バナナ出たよ」


その日の旅の最後に、
ママと夕陽を見つめました。


冬の到来は、
この土地に棲みついた生き物を、
平等に試しているのでしょう...


多くの生き物が、
この季節を境に毎年去ってゆく。


弱ったものを脱落させてゆく。


生き物たちは、
どんな思いで初雪を迎えるのでしょうか。


地震に見舞われた
西原村の草原には、
10年以上にわたって
受け継がれている
山犬の巣穴があります。


その広大な草原を見下ろすとき、
私はからだの底から湧き出てくる
不思議な力を感ぜずにはいられません。


「生きろーー!」