腕枕 | 続・阿蘇の国のアリス
僕の右腕には
いつも鈍い痛みが残っています。

ママにしている腕枕の痛みです。

本当は自由に眠りたいのですが、
これがないと
ママは安心して
眠れないそうなので、
仕方がありません。

ママが眠りについてからも
油断はできません...。
彼女は寝ついたと同時に、
悪い夢をよく見るからです。


悪い夢と言っても、
カマキリに追いかけられたり、
クマと闘ったり、
恐竜を発見したりするという、
僕からしたら
ワクワクするような
夢なのですが...
彼女が悲鳴を上げるので
起こしてあげます。
そして夢だと分かると、
彼女は今度こそ
本当に深い眠りに入ります。

ようやく僕の眠る番です。
僕の役目は、
彼女を心の底から
安心させてあげる
ことなのですから...。

最近はアリスも
ママの真似をして
僕の腕枕で昼寝を
するようになりました。
やはりママと同じように、
安心した顔で眠っています。

僕は時々、
腕枕で眠っているママに
「アリス」と呟いてしまいます。
隣に寝ているのが
もうアリスなのかママなのか
分からなくなってきました。

今日も僕の腕には
鈍い痛みが残っています。

けれどもそれは、
絶対に忘れることのできない
重くてあたたかい痛みです。

「ママおやすみ。
明日は楽しみにしていた
コンサートだね」

「わたしアリス...」